これからだった私と七松小平太 ページ21
「なぁ」
「どうかした？七松くん」
「カミサマって信じるか」
そう言う七松小平太の横顔は真っ直ぐに青空を見つめていた。
「いきなりだね」
「そうでもない」
ぽすっと聞きなれた音がする。立ち上がった彼を見上げるとバレーボールを空に上げては取り、上げては取りを繰り返していた。
本当に好きなんだ、と呟くと「まだ質問の答えを聞いていないぞ」と返事を急かされる。
「でも、難しいから」
「いるかいないのどっちかだ。簡単だろ」
彼にとってはそうなのかもしれない。カミサマだなんて不条理で不安定なものを唐突に問うのもどうかと思うのだけれど。
「そうだね……」
バレーボールがより一層高く上がって、そして彼の手の中に収まった。バレーボールはもう上には上がらなかった。彼はまた答えを急かすようにして私を見る。
「今から話すことはよく分からないかもしれないよ」
「いいぞ。いいから話せ」
「強引だなぁ」
「そうでもしないとお前は何にも話さないだろ。私は柳の言うことなら何でも聞きたい」
そう言葉を真っ直ぐに伝えられる所は七松くんの長所なのだけれど、人によっては勘違いしてしまうかもしれない。そう指摘しようと思ったが、また返事を急かされるだけなのは目に見えているので彼が求めたものを言葉に乗せる。
「カミサマはいるかいないか、だったね」
彼はまん丸の目をこちらに向けて私の方を見て座り込む。
「カミサマはね。居たんだよ。確かにそこに居た」
彼は何も言わなかった。彼らしくもなく、ただ黙って続きを待っているだけだった。
「ずっと隣にいてくれた」
ずっと隣にいなかった。
「誰にも見えなくても私だけが見えていたならそれで良かった」
本当は誰もいなかった。
「だってそうなら私の、私だけのカミサマだから」
それならなんで
「でもね。カミサマはいなくなってしまった」
ねぇ
「いきなり消えてしまった」
どうして
「……どこへ、行ってしまったの」
絞り出した言葉とともに私の身体は強い力で腕を掴まれる。
ぎち、と骨が軋む音がした。
「七松くん。痛いよ」
「すまない。でもお前が」
その続きはなかった。息を吸う音と息を吐く音が交互に聞こえて、私は妙に落ち着いていた。
「私が、何？」
私にはしつこく答えを急かすのに自分は急かされても答えない。
感じたことがある。
彼はきっと私のことが好きなのだ、と。
嗚呼、真上に日が昇る。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
