土に埋もれた君の兄弟 ページ17
「分かりました」
ざっくざっくと土を掘っていた手を止めて彼は面倒臭そうに私の方へと視線を向ける。
「そんなに信用出来ないのなら」
違う、違うよ。違うんだよ。
「ここで誓いを立ててしまいましょう」
あまりにもあっけらかんとそんなことを言うものだから目を見開くと彼はため息をひとつついてもう一度、今度は力強く彼の瞳が私の瞳を貫く。
あの日の私と彼の約束が全ての始まり。
「僕は8番目ですから」
分かってる。だって名前が物語っているもの。
「貴方と一緒になるのも8番目です」
それが何でか訳が分からなかった。現実味を帯びていなくて信じたくもなかった。でも彼は真剣そのもので口を挟んではいけない気がした。私が黙りこくっているのを肯定と取ったのかあまり話さない彼がゆっくり言葉を零す。
「貴方に触れるのも」
「貴方と口づけを交わすのも」
「貴方と夜を共にするのも」
「全部、8番目なんです」
そこまで零してから、私は彼の拳が強く握り締められているのに気がついた。とても苦しそうなのに泣き喚いたりしないのは男の意地なのだろう。
私が彼の手をとると縋り付くように抱きついてくる。痛いよ、と声をかけようとしたのだけれど彼があまりにも苦しそうなものだから背中を叩いて落ち着かせる。でもその後に来たのはあまりにも息苦しくなるような言葉だった。
「僕はただ貴方とずっと一緒にいたかっただけなのに」
いよいよ泣き出してしまった彼は私の肩に頭を預けて顔を見せないようにと意固地になる。肩が妙に湿っぽくなっているのだから分からない訳がないのに。
喜八郎、貴方が1番目だったならこうはならなかったのでしょうか。
それとも行きちがいになってしまったかもしれないからこれで良かったのでしょうか。
はたして貴方が喜八郎でなくても私は貴方に焦がれたのでしょうか。
彼を抱きしめて慰めの言葉をかけようとしているのに唇が震えて声も出なくてただひゅうひゅうと風を起こすだけだった。
貴方たちはどうお思いですか。
その問いに返事はなかった。頬に生暖かいものが伝っては落ちてゆく。私も泣いていることが分かると込み上げてくる感情も抑えがたい嗚咽も何もかもが我慢できなくなってゆく。彼を抱きしめる腕に力を入れるとそれらはもう溢れ出して止まらない。
ああ、ごめんなさいね。
土に埋もれた君の兄弟
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます!とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました!お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます! (2019年5月11日 16時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか?もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年8月18日 14時