☆ ページ14
「対面同席五百生って知っていますか」
「どうしたの？不破くん」
優柔不断だと言われている彼はすっかり立派になって、今日この忍術学園を卒業してしまう。
「目の前にいる人は前世から500回は会っている縁のある人だという教えのことですよ」
耳打ちをするように告げられて、それは彼の精一杯の慰めなのだと察する。
私と竹谷くんのこと、１番始めに気がついたのは鉢屋くん。
１番気を使ってくれたのは尾浜くん。
１番解決策を考えてくれたのが久々知くん。
１番相談にのってくれたのが不破くんだった。
本当に本当に嬉しかったんだよ。
「２人はもしかしたら前世で特別な関係だったのかもしれませんね」
そう言って微笑んで、希望を持たせてくれた彼はきっと優しい。
もしも前世で貴方と特別な関係だったなら。
私はそれだけで報われる。
それだけ貴方のことが好きだった。
卒業の日。私は初めて自分から男の子に、竹谷八左ヱ門に触れた。
「佐伯さん、ですね」
服の裾を掴んでも竹谷八左ヱ門は驚かなかった。
私の姿が見えないことに慣れてしまっていたから。
私は彼の背中に手を回して抱きしめた。本当に触れているだけの弱い拘束だった。
始めは顔を真っ赤にしていた彼も戸惑いながらも見えない私の背中に手を回してくれる。
ごめんなさい。今だけは
神様なんて信じていなかった。伝説も言い伝えも何処かの偉いなんたらの教えも全部嘘だと思っていた。
対面同席五百生
彼との繋がりをどうしても得たいと思っていた。
だからそれを信じて、彼と私がこうなったのは運命なのだと思うことにした。
少しでも彼と繋がっていた可能性があるのだからこの想いを終わらせようとした。
でも駄目だった。
どうせ最後なのだからと触れたこの人はとても温かくて泣いてしまいそうになる。
「どうしましたか？具合が悪いんですか」
この時ばかりは彼に私の姿が見えないことも声が聞こえないこともありがたく思えた。
だってこんな泣きっ面好きな人に見られたくない。
「卒業おめでとう」
彼には聞こえない私の声でそう言った。
予め準備していた紙には私が言ったことがそのまま書かれている。それを彼に押し付けると、ずっと前から焦がれていたその笑顔を私がいるだろう空間に向ける。
私は彼の手を掴んだ。困ったように笑う仕草も何もかもが愛おしい。
ごめんなさい、さよなら
最後に届かない声を振り絞って私は彼の手を振り払った。
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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます！とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました！お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます！ (2019年5月11日 16時) (
レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか？もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さえき | 作成日時：2018年8月18日 14時
