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ページ11

ねぇ、なんで私なの。

「佐伯さん。お願いします」
「……今回だけだからね」

膝の上には不破雷蔵、私の手には耳かき棒。
お分かりいただけただろうか。今の異様とも言える状況を。

「すみません。別の人に頼むと痛いやら痒いやらで佐伯さんにしか頼めないんです」

君と顔までおんなじ鉢屋三郎くんに頼めば喜びそうなものだけれど。
多少の疑問は置いておいて普通に耳かきをするととても喜ばれる。

「ありがとうございました」

そんなに柔らかな笑顔を向けられてしまったら何も言うことができないじゃない。ふわふわの髪の毛が服の上から太ももをくすぐってこそばゆい思いをしたことだったり、少しだけ恥ずかしく思えてしまったり。ただ年頃の女子に近づきたいことを察してしまったり。

「佐伯さんに耳かきしてもらったのか?」
「うん。女の人って感じがした」
「ちくしょー!!俺なんか勘右衛門にやってもらったのに」
「俺の何処が悪いんだよ。三郎」
「……やっぱ、なぁ」

あぁ、恥ずかしい。穴があったら入りたい。と言うと天才トラパー綾部喜八郎に蛸壺に落とされてしまいそうだけれど。
噂話をされることはあれども直接このような場に出くわすことほど気まずいことはない。ここは忍者の学校のはずだというのに私の気配に気がついていないというのもどうかと思うが。

「お、八左ヱ門!」

その名前を聞いて引き返そうとしていた足が動かなくなった。近くにあの人がいる。焦がれ続けたあの人が。

「今、佐伯さんの話をしてたんだ。ほら、紅一点の!」
「勘右衛門がそう言うと梅干しが乗っかっただけの弁当みたいだな」
「兵助は不思議なこというなぁ。ねぇ三郎?」
「あぁ。雷蔵は可愛い」

ほら、こうゆうところ。6年、4年と個性の強すぎる学年に挟まれているため、常識人の枠の中に収まりがちだが、彼らも充分に個性的だと思う。お互いに個性を認め合っていて見ていてとても微笑ましい。

「そういえば八から佐伯さんのこと、聞いたことないな」
「なんだよ。今更、女の話が恥ずかしいのか〜〜?」
「八左ヱ門くんったら純粋〜〜」

年相応なところもあるのだ、と思わず笑みが零れる。私には若い子の話にはついていけそうもない。別のことを考えてどきどきする鼓動を誤魔化して彼の返事を待つ。


「其奴、誰だ?」


ここからでも場の空気が凍るのを感じた。

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はたはた(プロフ) - 雅榴さん» 雅榴さん、コメントありがとうございます!とても沢山褒めていただけて嬉しいです^ ^リクエスト承りました!お時間がかかると思いますが必ず書かせていただきます! (2019年5月11日 16時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - お初失礼します。他にはない独特の世界観や言葉のセンス等々いつも楽しませて貰っています。女好きのシリーズで土井先生のお話はリク可能でしょうか?もしよろしければご検討ください。無理せず今後も頑張って下さい。 (2019年5月5日 17時) (レス) id: cad46f67b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さえき | 作成日時:2018年8月18日 14時

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