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「Aちゃんから聞かないの？」
「出会ったばかりの頃に話す機会が
あったんですけど触れられない雰囲気で」
「変ね…好きな子には自分の話を
したがるのが男ってもんなんだけど。
自分のことを知ってもらいたいのよ。
家を分けてるのも、謎だわ…」
神妙な顔つきになる、
ユリさんを見て胸がざわついた。
「自分の身は明かさずに、
スキンシップを図ろうなんて…
Aちゃんの話を聞く限り
もしかして彼は…」
言いにくいのか、
ユリさんは言葉を詰まらせていた。
「私は大丈夫です」
「じゃあ、言うね。
これは個人的な意見になるけど
私にはAちゃんが
遊ばれてるとしか思えないの」
ごくりと、息を呑んだ。
話している途中から、なんとなく察していた。
いや、少し前から何かが変だということは
わかっていたのだ。
こうして、他人に言われたことで
確証へと変わった。
自ら聞いたくせに、傷ついた。
「ですよね。そんな気はしてました」
「心配ね…ねえ、
まだ一線は超えてないわよね？
例え優しいだけの男でも生理的欲求はまた別よ。
それが目的なら直ぐに離れた方が良い。
Aちゃんが傷つかないためにね…」
「いえ、そんなことは無いです…
少し…考えてみます」
ヒスンは優しくて素敵な人だ。
けれど経験豊富なユリさんの言葉は辛辣で
腑に落ちてしまうことだらけで。
私はきっと、ヒスンにとって
都合の良い女だ。
家政婦をし、弱みまで握られている。
「でも、好きな人と普通したいですよね
…そういうのって」
「世の中、例えタイプじゃなくても
できる人はいるのよ。
しかも割と沢山ね…」
相手がヒスンなら
きっと、私は拒否出来ない。
約束をしたけれど、それを守る
確証なんてどこにも無い…
「Aちゃん大丈夫…？
ごめんなさい私ついカッとなって」
ユリさんが怒っている理由はわかる。
私の身を案じてくれて言ってくれた
ことも伝わっている。
「いえ、ユリさんに教えてもらえて
良かったです」
「結局は、Aちゃん次第よ。
私は…Aちゃんの味方だからね」
自分次第。
そう言ってくれたユリさんに
私はただ頷くだけだった。
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作者名：yori | 作成日時：2022年8月24日 23時
