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ユリさんは目をまん丸にして
私を見つめるだけだ。

突然こんな話をしだして、引かれたに違いない。




けれど、気がついたように我に返った彼女は
想像とは反した表情で私の肩に手を置いた。







「びっくり。
 Aちゃん、好きな人がいるんだ」

「あっ…その」






勢いに押し倒れそうになる。
ユリさんの興味を含んだ眼差しはどこか楽しげだ。






「相談しても、良いですか?」






他人に、自分の恋バナを
する時が訪れるなんて。


なんだが大きな壁を一枚
壊したような気分だった。






「ええ、勿論。私で良ければだけど」







.
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「恋人でも無いのに、
 簡単に触れたり、甘えてきたり。
 そういう行動を男の人は
 普通にするものなのかなって…」





眉を顰め、ん〜と押し黙った彼女に
申し訳なさを感じる。






「すみません急に…」

「いいの。真面目なAちゃんだから
 私もちゃんと考えたくて」





良いとも悪いともとれない表情で
ユリさんは続けた。






「そのまま考えれば、
 Aちゃんに好意があるからじゃないかしら。

 好きでもない異性にわざわざ
 思わせぶりな行動なんて取らないもの」






つまり、ヒスンが私を好きだと
言うような論理だ。



それは…あり得ない、絶対に。







「…あり得ないと思います。

 私を好きになるような人じゃない
 ってことだけは分かるんです」

「そうなの?例えばどんなところ?」






ヒスンのように容姿も中身も完璧な人が
わざわざ地味で貧乏な自分を
好むはずがないのだ。




ヒスンが優しいのは誰に対しても
同じなんじゃないかって。

私はそう、思ってた。





「訳あって彼の別宅に
 住まわせてもらってるんですけど…
 毎日のように彼を見てるのに
 彼が何をしてる人なのかよく
 わからないんです。
 
 本当の家も、仕事も、友達も
 今更聞けなくて」






ヒスンの口からヒスン自身の話が
出てこないことを初めは楽だと思っていた。




干渉したくないし、されたくない。
しかし日を重ねていくうち
職場の話や家族の話を
唯一ヒスンに話した自分とは対照的に
ヒスンの話が出る気配はなかった。
 


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設定タグ:ENHYPEN , enhypen , ヒスン   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:yori | 作成日時:2022年8月24日 23時

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