57 ページ7
.
ぼんやりと瞼を開ければ
明るくなった視界に朝だと気付かされる。
アラームが鳴るより先に目が覚めたのは
この、息苦しさのせい。
「苦し……」
目の前いっぱいに写るのは
真っ白な、ヒスンがよく着ている寝巻きだ。
ああ、そうだ。
昨日私は何故かヒスンと寝ることになって…
「っ……！」
そしてまた襲ってきた羞恥心と
ヒスンとの距離に気が付き、
離れようと身を捩った。
…が、ヒスンの逞しい腕と
脚に抑え込まれていたため
身動きが取れない。
まただ。
今度はちゃんと、ヒスンの抱き枕にされている。
ヒスンを起こす時、
こうやって枕に抱きついて
眠っている姿を度々見かけていたのだ。
今朝はそれが私になったという事だけど
私は枕ではない、人だ。
しかも、ヒスンに自覚が無いのだから
また誤解を生む前に起こさなくては。
「ヒスンさん…」
小さく声をかけるも、起きる気配は無くて。
ただ、頭の直ぐ上でヒスンの寝息が
規則正しく聞こえている。
なんだか、すごく落ち着く…
ふわりと全身を包む、良い匂いも
同じ柔軟剤を使っているのに
自分とは違うように思える。
少しだけ、このままで居たい。
どうか今だけは、この醜い気持ちを許して。
そうして、うとうとしかけた時だった。
「ん、、」
「……え、わっ」
大きな寝返りをしたヒスンに
放り出されるようにベッドから
突き飛ばされたのだ。
「何なの……」
突き飛ばされたことを不服に思ったが
気付かれなかっただけ良かっただろう。
もしヒスンが起きてしまっていたら…
考えただけでぞっとした。
「私、何やってるんだろ」
こんな風に次第に求め出す自分は
スンにとっては厄介者だろうと
雑念だらけの感情が哀れに思えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yori | 作成日時：2022年8月24日 23時
