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「明日って仕事？」
「はい、いつも通り午前出勤です。
でもヒスンさん疲れてると思うし
寝室使っていいですからね」
「じゃあお言葉に甘えて、
隣で寝かせてもらうよ」
「はい。……え？」
よく聞き取れなかったのは
ドライヤーの音がうるさかったからで。
スイッチを消して改めて問う。
「ヒスンさんが寝室使うんだよね？」
「うん、Aと一緒に寝る」
「……どういうこと？」
くくくと笑ったヒスンを見て、
またいつもの冗談かと分かればつられて笑う。
「当初の約束通り何もしないけど」
「冗談ですね」
「いや？本気」
駄目？と甘えを含んだ声で
振り返り手を合わせる。
こんな愛嬌をしてくるなんて。
けれど…冷静になって考えてみた。
添い寝という発想が私だけにあったら、と。
見慣れていたせいだがヒスンのような
綺麗な人が私なんかを相手にどうこう
しようとは思えない。
仮に不振を抱いてもそれは
私が自惚れているとしか言えない。
それでも、私の方が
気が気でないのが問題なのだ。
「ヒスンさんがって話じゃなくて…」
自分が意識してしまうから。
というのはそれこそ身の程知らずか。
「なら、決まり」
「今日はゲームしない…よね」
「うん、今日はもう眠いし」
どうやら覚悟するしかないらしい。
先に寝室に入って行ったヒスンを見届けた後、
部屋の片付けと戸締りを済ませ
寝室の前で息を吐いた。
大丈夫。勘違いするな。
そう、自分に何度も言い聞かせて。
「失礼…します」
「ふっ、はいどうぞ」
ぎこちなさが拭えないまま、
ベッドに潜り込んだ。
隣に寝転ぶヒスンに背を向けるよう、
出来るだけ端に寄ったがダブルベッドが
狭く感じるほどヒスンとの距離は近く感じる。
ああ、気まずい…
緊張から眠気も訪れず、
何を話すも頭が真っ白で
無言のまま時間がただ過ぎていくだけ。
(っー……)
だがそれも束の間、
背後から寝息が聞こえだしたので
ヒスンは先に眠ってしまったらしい。
緊張していたのは自分だけだった
ということに呆れてしまうが、
ヒスンが眠ってくれたおかげで
張り詰めていた緊張感も次第に落ち着きを取り戻す。
「おやすみなさい…」
ちらりと、振り返り眠るヒスンの
整った寝顔に小さく声をかけた。
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作者名：yori | 作成日時：2022年8月24日 23時
