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ヒスンは数日家を空けていた。
仕事中、忙しくしているはずなのに
連絡は何故か以前より増えている。
「返信に困る……」
今日はこんなものを食べたと
写真が送られてきたり、
おやすみやおはようの挨拶をするだけの連絡。
買ったばかりだからと可愛いスタンプを
大量に送られてくることもある。
私に向けてまで
他愛のない話をする時間は無いのに。
だから、私から連絡はしないという
気遣いをしていた。
数日が経ち、一度必要なものを
取りに来たとほんの数分帰ってきた日には
やはり疲弊した姿が見えた。
そこまでして連絡をしなくても
私は大丈夫なのにと思う。
やはりまだ私を心配しているのだろうか。
「申し訳ないです…」
途中まで打ち込んだ文字を消す。
きっと、謝ったら
またヒスンに怒られるんだろう。
ヒスンが疲労を吐露したことは無いのだから
彼が良いならそれで良いのかもしれない。
私自身の意識は変わりつつあったけれど
まだそれは始まったばかりで
程度を測れるほど器用じゃないから。
人に感謝を伝えるのは難しい。
けれど、直接口に出すより文字のほうが
いくらか行動を起こしやすかった。
『気にかけてくれてありがとうございます。
こちらは気にせずお仕事を頑張ってください』
こう返事を返した。
そうすれば、すぐに返信が返ってきて。
『お土産楽しみにしててね』
と、可愛い桃のキャラクターの
スタンプが一緒に送られて来るのだから
その可愛さにほっこりしたり。
こうしてヒスンのいない数日間は
一人で食事を取り眠りに着いた。
少し前までこの生活が当たり前だったのに
今はどこか寂しさを感じてしまうのだから
二人の生活にすっかり順応していたことを知る。
「ただいま」
そして、数日後にヒスンは帰ってきた。
「Aって凄いよ。
いつも帰って来るとご飯がもう出来てて
お風呂の支度だってしてくれてる
もしや、エスパーなんじゃないの」
「ふふ、まさか。
私がいることで小さなストレスも
感じてほしくないからですよ」
「ストレスなんて、感じてない。
むしろいや……」
言いかけた言葉を打ち消すように
ヒスンは夕食のスープを口に運んだ。
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作者名：yori | 作成日時：2022年8月24日 23時
