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収録が控えているというのに
それどころではなかった。
メイクも着替えも終えて
出番を待つだけだというのに
気持ちは一向に切り替わらない。
その原因は昨夜のことにあると
自分でもわかっていた。
どうして、
あんな真似をしてしまったのか。
「ヒスニヒョン？大丈夫ですか？」
「あ…ジョンウォン、平気だよ」
「顔色が良くないですよ」
「問題ない。しっかりするよ」
他人のジョンウォンから見てわかるのなら、
それはファンにも伝わってしまうだろう。
そんなことがあったらアイドル失格だ。
しっかりしろと頭で言い聞かせ
大きな深呼吸をした。
収録内容は音楽番組で行う
バラエティだった。
第四世代と言われる若手の
アーティスト達が集められ、
定番のクイズやスパイゲームを行う企画。
男女グループ関係無く収集され、
最近出てきた新人のアイドル達も参加していた。
そこには、ミニョが属するグループも参加しており
彼女の甲高く響く、自分の名を呼ぶ声で
悪い意味だが気持ちが切り替えられたと思う。
「ヒスンオッパ 〜！
今日は宜しくお願いします！」
「うん、宜しく」
「はぁ…今日もとってもかっこいいです。
打ち上げヒスンオッパの隣予約しても
良いですか？」
「あ〜どうだろう、ジョンウォンかニキが
座りそうだけど…」
「え〜……悲しいです。
こういう時しかまともに話せないのに〜。
私、オッパの話が聞きたいし私の話も
聞いて欲しくって」
興味の無い子に、何故自分の話を
しなくてはならないのか。
ミニョの話というのも所詮は
自分に見染められることが目的なんだろう。
そもそも、オッパなんて
呼ばれる間柄ではないはずだ。
「そうだ！
ジョンウォンさんと、ニキさんに
頼めばいいんだ！」
やはり、ミニョは少し。
その孤を描く瞳の奥が
怖いなと思う。
取り敢えず、収録に集中したかった。
後の打ち上げはジョンウォンに
頼んで隣にいてもらえば大丈夫だろう。
面倒をかけることになるが、
ミニョの相手をすることだけは
我慢ならないのだ。
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作者名：yori | 作成日時：2022年8月24日 23時
