トラブル ページ5
次の日の朝。
朝野が学校へ着くと、京介と海、そして1人の女子生徒が青ざめた顔で職員室の前に立っていた。
「京介、どうしたんだ?お前ら、何かしたのか?」
「あ、部長、いえ、俺らが何かしたんじゃなくて、その」
京介が言葉に詰まりながら話していると、傍らにいた女子生徒が泣くように話してきた。
「あ、朝野先輩ですよね!?オカルト部の!…っその、渉さんが…!!」
どうしたのかと思い職員室を覗けば、1人の教師の前に、傷だらけの3人の男子生徒と渉が立っている。何事かと思ったその瞬間、教師の怒号が飛んできた。
「――どうしてこんな事をしたんだ!!」
その言葉に、渉も含め4人の生徒は押し黙る。黙ったままの生徒達に、教師はさらに怒声を浴びせる。
「特に潮原!!今回の喧嘩、お前から吹っ掛けたそうじゃあないか。どうしてそんな事をしたんだ!!答えなさい!!」
喧嘩?と朝野は首を捻る。本来の渉ならば、そんな事は絶対しない。父親が弁護士だったということもあり、あのはっちゃけた性格の割には常識人だし、人の悪意にも割と敏感なのだ。正義感は人1倍強いと思う。
そんな渉が喧嘩なんて、珍しいどころの話ではない。
「…あの3人は虐めグループなんです」
ふと話してきたのは、京介。
「今朝登校したら、この人があの3人に虐められてるのを目の当たりにして…それでムカついた渉があの3人に喧嘩吹っ掛けたんです」
成程、と朝野は納得する。渉の正義感の強さ故に起こしてしまった問題というわけか。
「あの3人の事は、先生も見て見ぬ振りをしていて…だから、いじめもどんどんエスカレートしていって、それで…」
再び怒声が響く。
「――もう1度聞く。どうしてこんな事をしたんだ!!」
また沈黙が流れる…とその時、不意に沈黙を破ったのは。
「…単にムカついたからです。それでは理由として不十分ですか?」
今までに聞いたことがない程、冷たく重い渉の声だった。
「可笑しいとは思いませんか。あの子が何をしたというのです。ええそうですあの子は何もしていません。…なのにあの子はずっとこいつらから虐めを受けていた。…まさかとは思いますが、気づかなかったなんて言うんじゃないでしょうね?ええそうでしょうとも先生はずっと気づいていた。でも見て見ぬ振りをしてきていた。そのせいで何も悪くないあの子はずっとこいつらから蔑まれて、虐められて…」
所々、笑いを含みながらまくしたてる彼女に、朝野は僅かな恐怖を覚えた。
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作者名:Lemon | 作成日時:2015年11月5日 1時