言霊と魔法 ページ3
目線を上げると、影の正体は香の遥か頭上から降って来た看板。
香が居た所は、建設中のビルの近くだったのだ。
「香っ!!危ない、そこ退いて!!」
海が叫ぶも、人間、突然の事に驚くと体が動かないものである。そして、それは香も同じ。ただ呆然と上を見上げて、目を見開いて落ちて来る看板を見つめることしかできなかった。
看板が香の頭上1、2mくらいのところまで迫る。…と、その時。
「"静止せよ"!!」
響いたのは、渉の声。見たところ、渉が看板を指差している。そしてその先にある看板は、完全に香の頭上で動きを止め、宙に浮いていた。
「あと30秒もちます、早く!!」
「ああ、わかってるさ!!」
渉の言葉に、魔導書を取り出したのは朝野。魔導書を開くとともに、魔法陣を2つ、香の足元と自分達のすぐ近くに展開させる。
「"Transitus"!!」
すると、香の姿がふっ…と消えた…と思ったら、いつの間にかこちら側の魔法陣に移動してきているではないか。
香がこちら側に来たと確認すると、渉は言霊を解除させる。と同時に、看板が轟音をあげて地面に叩き付けられた。
「…信じられない」
普段、オカルトやホラーの類は信じない、科学一辺倒の海だったが、自分の脳の処理速度を遥かに上回るものを見せつけられ、混乱してしまう。
「つーかお前、30秒とか短くない?もうちょっともたねーの?」
「う、うるさいですね!!前も言ったじゃないですか!!"呪詛"は効力が弱いんですよ!!」
そんな中でも、オカルト部の者は皆、いつも通りだ。まるで、あんな人間離れした技を毎日見ている、とでも言うように。
「まぁ、オカ部に居ればああいうのは日常茶飯事だから」
いつの間にか、側には京介。
「オカ部では渉も普通に言霊使ってるし、部長も遠慮無く魔法ぶっ放してる。たまに部長と聖也先輩が、魔法で部内の物壊したりするしな。」
それは"普通"と言うべきなのだろうか。というか、それが日常茶飯事になってるのはおかしいと思うのは自分だけなのだろうか。
「…なんか、すごいね、オカルト部って」
「ん?そうか?ありがとな」
海の思いには全く気付かずニカッと笑う京介。
いや、褒めてないんだけど…と言おうとして、飲み込んだ。替わりに出てきたのは。
「は〜…本当信じらんないし、色々意味わかんないけど……ありがと」
あからさまに京介に苦笑いされる。そんなに自分がお礼を言うのは変だっただろうか。
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作者名:Lemon | 作成日時:2015年11月5日 1時