予知夢？ ページ1
「――変な夢を見る？」
目の前にいる人物に尋ねる渉。
「うん、１ヶ月ほど前から」
そう言ってこくんと頷くのは、渉や京介の同級生で友達の氷山海。
今回の依頼者はこの海である。
「変な夢って、例えばどんな感じだ？ただ変なんだったら、わざわざ此処に来る意味は無いと思うんだが」
「そんなのわかってるよ、朝野先輩。ただ変な夢見たくらいで、僕が此処に相談するわけないでしょ。実は…」
海が話し始めたのは、実に奇妙な夢の話だった。
――１ヶ月前くらいかな、ある夢を見たんだ。
その夢の中で、僕はバスに乗ってた。空や、周りの一般の人と一緒にね。いつもと変わらない登校風景。そう思ってたんだ。
…でもね。突然、もの凄い音がして、体がふわりと浮いたような感覚に陥った。周りからは、沢山悲鳴が聞こえる。…そしてそこで一回、なぜか僕の意識は途切れてるんだ。
そして暫くして目を開けると――勿論夢の中でだけど――べこべこに潰れたバスと、沢山の人が居た。そこには空もいた。誰一人としてピクリとも動かなくて、そこら中に赤色が溢れてて。そしてそれは、空もおんなじなんだ。背中を真っ赤に染めて、ピクリとも動かない。僕が呼んでも反応しない。
いつの間にか地上はもの凄く上のほうにあって、とても手の届く高さじゃない。その内に息苦しくなって来て、意識が遠のいて、柄にもなく『死にたくないよ』って叫んだ所で目が覚めたんだ。
目が覚めて、ああ夢だったんだ、って思っても、妙にその夢が頭から離れなくて。ちょっと嫌な予感がしたから、その日は空に『今日はバスじゃなくて電車で行こう』って言って、電車で登校したんだ。
結局、学校では特に何も無かったから、気にしすぎかなって思ってたんだ。そしたらニュースを見てた空がいきなり、『ちょっと、これ見てみろ』って言うから、そのニュースを見てみた。
…ぞっとしたよ。それは、今朝急に道路が陥没して、その時走行していたバスや乗用車が巻き込まれた、というニュースだった。当然死傷者も沢山出た。…そう、まさに夢のとおりだったんだ。
それからというもの、毎日こんなかんじなんだ。不吉な夢を見ては、それが現実へと変わる。ずっとそれの繰り返しなんだ。――
「僕の話は以上だよ」
部室には、不気味な程の静寂が漂った。
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作者名：Lemon | 作成日時：2015年11月5日 1時
