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思い出されるのは蒸せ返る血の匂い。液体の滴り落ちる音。襖から出た時に見た家族の遺体。朧げにある昔の記憶。
だが、その記憶だけは鮮明に覚えていた。もういっそ、泣きたいぐらいに。
「先輩、ごめん。俺無神経なこと言った」
『いいえ、気にしないでください。誰かに話してしまいたい、と思っていたところですから』
シュン、と眉を下げて言った彼に私は顔の前で手を振った。
『虎杖さん、私の話を聞いてくれますか?』
「もちろん」
太陽のように笑う彼がその時どうしようもなく眩しかった。生きら力、と言うべきなのか。生命力に溢れている光属性の笑顔だ。
『10歳の時に親と兄と姉を殺されました。生き残ったのはクローゼットに隠されていた私と三つ上の姉のみ。ですが、その姉も四年前に亡くなりました』
「…………鬼に?」
鬼に殺されたのか。それが彼が聞きたいのだろう。
『はい。鬼との戦闘の末死亡したんです』
彼の表情が歪んだ。悲しそうな今にも泣きそうな、そんな顔。私は微笑むと、彼の頭に手を伸ばした。彼の髪の毛は思ったより柔らかかった。
『守りたい人ほど、私の掌から零れ落ちてしまうんです。家族も姉さんもそして…私達を救ってくれた人も』
空を見上げた。サラリと揺れる白髪。五条先生と同じ髪色だったが、一つでまとめれるくらいには長かった髪の毛。アメジストを嵌め込んだような瞳はいつも綺麗だな、と思っていた。
ーーー師範、逢いたいです
会えないとわかっているけれど、会いたい。師範の紫色の目は夜の綺麗な日はいつも夜空を映していた。
そんな遠い昔のことを思い出すほど私は今、記憶を掘り起こしているらしい。
『もうすぐ、鬼との最終決戦が始まるでしょう。人喰い鬼をこの世に作れるのはたった1人。鬼の始祖のみ。鬼の始祖を倒したらこの世から鬼はいなくなります』
鬼がいなくなった世界はどんな世界なんだろう。わからない、だって私は前世その世界を見ることなく死んでしまったから。
生きていたら、どうだったんだろう。平和を噛み締めて生きていたのかな。日常を謳歌していたんだろうか。もしかしたら、外国に行っていたかも知れない。
今世では生き残れるだろうか。
「先輩、死ぬつもり?」
『いえ、そう言うわけではないですよ。ただ、私はあの日から鬼を滅するために命を費やしてきました。私の命は鬼を滅するためにありますから、呪いは貴方に任せますね』
偉そうなことを言っているのはわかっている。
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白い流星ーいずみんー(プロフ) - 初めまして〜。この小説は元々、落ちとか決めてなかったんで五条先生落ちになるのかはわかんないです…(完結のタグつけちゃった…)応援ありがとうございます (2021年5月26日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年5月26日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
ノノ(プロフ) - 続き楽しみ (2021年5月16日 23時) (レス) id: cf6ccd0ff8 (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - コメントありがとうございます。頑張ります! (2021年5月16日 23時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
ノノ(プロフ) - 続き楽しみです!!!!!!! (2021年5月15日 10時) (レス) id: cf6ccd0ff8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い流星ーいずみんー | 作成日時:2021年5月9日 9時