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表には胡蝶しのぶと書いてあった。
そして、その右側にデカデカと栗花落カナデと書いてある。私が手に取った手紙は全部で5通。その内、2通は破られていた。カナヲ当てのものだったらしく、カナヲのことだからこれを見つけて読んだままだったのだろう。
でも、どうして捨てなかったのか。いや、捨てないのは理解できるがどうしてこれらがカナエ姉さんの机の中に?
「あれ?カナデ当てだね。どういうこと?同姓同名の人かな」
覗き込んできた五条。私は頭を振った。
『私当て』
パチクリと五条が目を瞬かせた。ビリビリと封筒を破る。まだ、誰の手にも触れていない
開くと、懐かしい姉さんの字が瞳に飛び込んできた。今ではもうなかなか使わない筆で書かれたその字にとてつもなく懐かしい。心が音を立てて今にも崩れ落ちそうだ。
急いで目を走らせて読んでいく。最初のうちは五条も「え?」とか「おーい、カナデー?」とか言っていたが私の異常に気づいたのか何も言わなくなった。
ポタポタ、と手紙にシミを作ったのは水だった。瞳から溢れ出した
「カナデ?!」
「どうした?」と聞いてくる五条に『何でもない』と返した。しのぶ姉さんがあんなこと書いてるなんて思わない。私は彼女から思った以上に愛を注いでもらっていたし、心配されていたのだと気づいた。
もう1通はびっくりドッキリカナエ姉さんから。たしかに遺書読んでないな、とか書いてなかったのかな。とは思った、最初は。まさか、あるとは思ってなかった。
しのぶ姉さんの手紙と同じスピードで目を通していく。大まかにいえば、しのぶ姉さんとほぼ同じことが書いてあって、でも言葉使いは個性が出るのか全て敬語だったしのぶ姉さんと違い、ほんわかと語尾が伸びたような手紙だ。
『姉さんらしい…』
いつのまにか涙はとまり、自然と笑みが漏れた。嗚呼、私は今こんなにも幸せだ。ずっと、迷子だった
そして
ちゃんと前を向いて、と言われている気がした。
ーーーカナデ
ふと、背後で2人の声がする。大好きなその声。
ーーー大丈夫だから
ーーー貴方なら出来るから
ーーーもし、大切な人が出来たなら
ーーーその人達と私達のところに来て頂戴
嗚呼、涙がまた溢れそう。そんな私の様子を五条は静かに見ていた。
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白い流星ーいずみんー(プロフ) - 桜つゆりさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです(とても)! (2021年8月12日 21時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
桜つゆり - 泣きました。感動しました。今まで見てきたクロスオーバーの話の中で1番です。神作です! (2021年8月12日 21時) (レス) id: c5f5202b6b (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - ピコピコさん» 疑問系ですね…、教えてくれてありがとうごさいます! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - わかさん» コメント、ありがとうございます!棘くんが普通に話してたら、毎日キュン死しそう…。これからも頑張ります! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
ピコピコ - 失礼します!44話の「交流会」の話で棘先輩が「なんで過去形?」って言ってるんですけど、疑問形だと思うのですが、確認をよろしくお願いします!! (2021年7月9日 15時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い流星ーいずみんー | 作成日時:2021年6月2日 20時