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特級の対処は五条がほぼ1人で行った。私はその周りにいた一級、二級呪霊の対処。私の術式のおかげで大体の呪霊は私に近づくだけで消えちゃうから、私はほぼ何もしていない。
「お疲れサマンサ〜」
『ん、』
「反応が冷たい!」
『五条がうるさいだけ』
「酷い」と言ってうずくまる五条を冷えた目で見たことは後悔してない。だって、五条だもの。
補助監督さんの車に乗り込んで高速道路を走る。その時、チラリと山の間から古い家が見えた気がした。
それだけなのに。
何故か目から離れなくて。
見えなくなった今でも脳裏に焼き付いて離れない。
ーーー行きたい
強くそう思った。
「どうしたの、カナデ」
私の異変を感じ取った彼が話しかけてくる。あの家に行きたい。でも、そうなら此処で車を止めないといけない。忙しい五条の邪魔をしてしまう。
どうしよう。
頭の中でぐるぐる考えが回る。口が開かなくて、汗が止まらない。
その時、ポンと頭に手が乗った。そのまま、その手は私の頭を優しく撫でる。
「迷惑じゃない。言ってごらん、カナデ」
いつもより何倍も穏やかな声が響いた。
ーーー心のままに生きてちょうだい
カナエ姉さんの声が響く。私は息を吸って、口を開いた。
『さっき、山の間から古い家が見えた。え、っと…その…』
まごつく。
「…………」
五条は黙ったままだ。
『わ、私あの家に行きたい』
突拍子もない話。見ただけの家に行きたいだなんて、ふざけてると思う。ダメだって、言われるかな。ううん、言われるよね。
そこまで考えて俯いた時だった。ポンポンと規則正しく頭を撫でられる。さっきとは違った撫で方で。
「行こうか!」
そう言った、
今の五条はまさしくソレだった。
補助監督さんに迷惑承知であの古い家に行きたいことを伝えると、高速道路を降りて引き返してくれた。先程、家を見た山の麓に着くと私たちは車を降りる。
『…この感じ』
山に足を入れた瞬間にヒンヤリとした風が私の頬を撫でた。
ーーー嗚呼、懐かしい
落ち葉を足で思い切り払うとそこには少し草が生えた土の道が見えた。
何かに弾き出されるように私の足は駆け出した。
「カナデ?!」
後ろで五条の声が聞こえた。でも、それよりも私は、私はこの先に行きたかった。
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白い流星ーいずみんー(プロフ) - 桜つゆりさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです(とても)! (2021年8月12日 21時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
桜つゆり - 泣きました。感動しました。今まで見てきたクロスオーバーの話の中で1番です。神作です! (2021年8月12日 21時) (レス) id: c5f5202b6b (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - ピコピコさん» 疑問系ですね…、教えてくれてありがとうごさいます! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - わかさん» コメント、ありがとうございます!棘くんが普通に話してたら、毎日キュン死しそう…。これからも頑張ります! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
ピコピコ - 失礼します!44話の「交流会」の話で棘先輩が「なんで過去形?」って言ってるんですけど、疑問形だと思うのですが、確認をよろしくお願いします!! (2021年7月9日 15時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い流星ーいずみんー | 作成日時:2021年6月2日 20時