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のほほん、とするカナエ姉さん。みんなで見送りをしよう、と言われて手を引かれる。反対側の手で大切な片割れの手を握った。

「行ってらっしゃい、姉さん」

その顔は久しぶりに見る寂しさを押し殺した不安そうな姉さんな顔。そんなしのぶ姉さんにカナエ姉さんは「はーい。行ってきます」とニコニコ笑って言った。

『ね、姉さん。あの、ねぇ……行ってらっしゃい…』

言いたかった言葉は出てこなかった。「生きて帰ってきて」って言うだけなのに。何故かその言葉が喉から出てこなかった。ギュッと唇を結んだ私をカナエ姉さんが優しく包んだ。

「生きて帰ってくるわ。だから、そんな顔をしないで」

優しく微笑んだ姉さんに私は腕を腰に回した。

「今日のカナデはいつもと違うのね〜。ねぇ、カナデこれだけは覚えていて」

私は優しく抱いたまま、姉さんは告げる。


「私が私たちがいなくなっても、心を閉ざさないで。心のままに生きてちょうだい。姉さんは貴方の笑顔が大好きよ」


それはまるで自分が死んでしまう、ような言葉。隣にいたしのぶ姉さん「姉さん」と少し強めに言う。カナエ姉さんがしのぶ姉さんとカナヲを腕の中に入れた。その言葉が心の中で反芻されて頭から離れなかった。


「行ってきます」


それは何処に?そう書こうとして、私の視界は暗転した。
気づくとまた、何処かに居た。空は先程と違って青く、太陽が優しく強く輝いていた。

手にはシャボン玉があって、私の隣ではスミ達がスヤスヤと寝ていた。スミ、キヨ、ナホを挟んだ奥にニコニコと笑いをたたえながらいるのは片割れ(カナヲ)

「あらあら、スミ達は寝てしまったんですね」

後ろから声が聞こえて、振り向くとそこにはしのぶ姉さんの姿があった。でも、言葉は敬語になっていて、その肩にはカナエ姉さんの着ていた羽織の存在。穏やかな笑みを人形のように貼り付けた姉さんの姿に私は目を知らずのうちに見開いた。なんで。

『しのぶ姉さん』

口から溢れたその言葉に「なんですか?」としのぶ姉さんが反応する。

『ううん…なんでもない』

何を言おうとしたのか分からなくて私は口を閉じた。何か言いたげな姉さんの姿が視界に映ったと同時に私の視界は切り替わった。

しのぶ姉さんが目の前で紫色の粉を口に流し込む。


『ッ、姉さん!!』


その手を掴むとしのぶ姉さんは少し目を見開いた。そして、「どうしましたか?」とニッコリ笑った。


なんで、そんなに平気そうに笑うの?



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白い流星ーいずみんー(プロフ) - 桜つゆりさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです(とても)! (2021年8月12日 21時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
桜つゆり - 泣きました。感動しました。今まで見てきたクロスオーバーの話の中で1番です。神作です! (2021年8月12日 21時) (レス) id: c5f5202b6b (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - ピコピコさん» 疑問系ですね…、教えてくれてありがとうごさいます! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
白い流星ーいずみんー(プロフ) - わかさん» コメント、ありがとうございます!棘くんが普通に話してたら、毎日キュン死しそう…。これからも頑張ります! (2021年7月9日 19時) (レス) id: 0e37fab493 (このIDを非表示/違反報告)
ピコピコ - 失礼します!44話の「交流会」の話で棘先輩が「なんで過去形?」って言ってるんですけど、疑問形だと思うのですが、確認をよろしくお願いします!! (2021年7月9日 15時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白い流星ーいずみんー | 作成日時:2021年6月2日 20時

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