ぎゅってして。Fuma.K

第10話 ページ10

俺は何事もないように、何も気にしないように、気にしないように……


菊池「無理、気になる…」


「菊池！ここ間違えてんぞ」


菊池「あっ、すみません…すぐ直します」


ほら、凡ミス。


だめよ、今日の俺。


少し離れたデスクから中島が眉を八の字にして見つめてくる。


目が合って俺はベッと舌を出した。
それを見た中島はへへっと笑って仕事に戻る。


中島も心配するレベルで俺はやばいらしい。


ミスをした書類を手にしてデスクに戻ると、前からスっと伸びてくる手。


菊池「えっ」


『よければ、どうぞ』


そう言われて顔をあげると、心配そうな顔をした望月さんと、手のひらに置かれた小さなチョコレート。


『疲れてるようなので、よかったら…』


まさか、そう来るなんて思わないじゃない？


フリーズしてる俺を見てまた困った顔をする望月さん。


『もしかして、甘いのお嫌いですか？』


菊池「あ、いや、貰います」


小さなチョコレートを受け取ると、嬉しそうに笑う望月さん。


うわ、笑うんだ。
いや、笑うよな。人間だもんな。


うわ、俺今、絶対キモチワルイ顔してない？


『今日は残業ルート回避しましょうね！』


そう言って両手をグッと小さくガッツポーズをした望月さん。


菊池「頑張ります…」


らしくない俺。


自分が自分でキモチワリいや。


貰ったチョコレートを口の中で転がしながら、ミスをした書類と片付いていない書類達を片付ける。


お昼になり周りはお昼を食べにゾロゾロと出ていく。
けど、俺は片付けなくちゃいけないわけよ。


なんてったって、目の前にいる望月さんに残業ルート回避しよって言われちゃったからね。


俺ってば従順。俺可愛いわ。


望月さんはお昼になると1人でお弁当を持って出ていく。


どこに行ってるかは知らない。


まぁ、仕事場でお昼は嫌だよなぁ…

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