【HQ!!】私は不運な人魚姫なのですか？【西谷夕】

胸に秘められたサファイア ページ42

足元で掛布団が大きく動く。


どうしよう。


私は一瞬なんと言葉をかけたらいいのか迷った。


「おはよう」はなんかちょっとうざったいし。


「ありがとう」はいきなり言う言葉でもないし。


「ごめんなさい」は寝起きに言われても困るだろうし･･･。


大きなあくびをしながら、彼は大きく伸びをした。


バッチリと目が合う。


あの性格からしたら、すっごい騒ぎ立てそうだな。いや暴言じゃないけどさ。


しかし彼の行動は予想に反するものだった。





――――「おかえり、A。」





いたずらに笑うその顔に、どこか愛しさを感じた。


私は蒼よ！忘れたのバカ！


そう突っ込んでやろうかと大きな口を開いたけど、肝心の言葉は出てこずじまいとなった。


不意打ちでぎゅっと抱きしめられる。


あったかい。


そのぬくもりで、すべてが蘇る。




ああ、そうか。





「童話の人魚姫、知ってるか？」


「あれさ、人魚姫が一番可哀そうに見えるじゃん？」


「あの話で一番悲しいの、何も知らぬまま愛する恋人を無くしちまった王子様だと思うんだよな。」


私は不幸な人魚姫なのですか？


誰かがそう私に問いかけた。


違うわ、A。


あなたは十分幸せよ。


その幸せに気づけなかっただけ。


あなたはいつでも、愛されていたわ。





―――深い海の底でずっと沈んでたの。苦しかったわ。


けどね。


世界って案外広いのよ。―――









―――「ただいま、西谷くん。」






私はあなたと共に生きてゆく。


そう誓ったの。







――I hope this story reach you. Thank you very much!

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