【HQ!!】私は不運な人魚姫なのですか？【西谷夕】

主役は誰？ ページ31

崩れ落ちた私を西谷くんは抱きしめてきた。


「なん、で。」


痙攣する横隔膜のせいでうまく息が吸えない。


問いかけても西谷くんは黙ったままだった。


ああ私分からないわ。


あなたの考えていることが分からない。


こんなこと、初めてよ。


怒ってるんじゃなかったの？


なのになんで私なんかにかまうのよ。


怒ってるんでしょ？


あなたの本音はそうとしか言ってないわ。


いつからかしら。


心の中まで透かして見える能力に頼りだしたのは。


なんだか怖いの。


見えないあなたが、怖いのよ。


「なぁ。」


『まずは落ち着け。』


西谷くんは私の目を見ていない。見ようとしていない。


西谷くんの目線は、今にも沈みそうな太陽に向いていた。


「俺さ、そんな頼りなかったかな。」


『男前でありたかったんだけどな。』


「俺さ、Aの中で、どういう存在として扱われてんのかな。」


『ただのクラスメイト？』


「信じてくれようとしないんだな。」


『疑われるところがスタートか。』


「寂しいもんだな。」


『悲しいもんだな。』


「なぁ。」


『なぁ。』


「童話の人魚姫、知ってるか？」


『小さい頃読んだことあるだろ？』


急な質問に驚いたが、私は小さく頷いた。


「あれさ、人魚姫が一番可哀そうに見えるじゃん？」


『泡になって消えちまうってヤツ。』


「けどさ、」


『けどよ、』


「あの話で一番悲しいの、何も知らぬまま愛する恋人を無くしちまった王子様だと思うんだよな。」


頬に雫がぽたりと落ちてきた。


今度は泣くの？


「俺じゃ、ダメなのかよ…。」


西谷くんはぐっと私を引き寄せ、頭を垂れてそうつぶやいた。


なんでだろう。


彼の本音が聞こえてこないの。

ビー玉の向こうに。→←溺れかけ。

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