3 神と少年 ページ4
「はい、じゃあまず服脱いで」
「！？」
「冗談冗談。服は脱がなくて良いけど後で採血するから袖はまくっといてね…あ、やっぱり打撲とか無いか確かめるために脱いでもらった方ええかも」
医務室の中、しんぺい神は椅子に座り待っているAに声をかけた。
椅子の金属で出来た脚の冷たさにひゃっと飛び上がる彼を横目に、器具を乗せたワゴンを運んで手際よく健康診断の準備を始める。
「それでは、これからA君の健康観察を始めます。最初に身長と体重測っておこか」
「…なして？」
「変な数値だったらより精密な検査をする必要が出てくるからね。病気は早期発見、早期治療が基本だし」
しんぺい神は「こっちおいで」とAに手招きをする。
「これで同時に測るから動かないでね〜」
「…これ、頭潰れないよな？」
「そんなことせんよ……うん、記録オッケー。もう降りても良いよ。次は視力測るからそっちに座ってね」
ーーーーー
「…よし、これで大体は終わり。視力聴力共に異常無し、むしろ良い方だね。怪我も擦り傷と軽い打撲くらいだから2週間あれば治るよ」
「…もう戻ってもいい？」
「いや、最後にビッグイベントが残ってるよ。…採血」
「さいけつ？」
「うん。腕、出して」
採血を知らないのか、首を傾げながらAは袖をまくり台の上にぺたりと腕を置く。
腕がまさぐられるのに少しぞわりとしつつも、まだ大人しい。そう、まだ。
「ここで良いかな。よし、消毒して…あ、痺れたり痛かったりしない？大丈夫？」
「ちょっと冷たいけど大丈夫」
「じゃあ刺しまーす」
「！？？？何するんだ！？」
しんぺい神が手に取った針先を見た瞬間、椅子を蹴っ飛ばしてAが後ずさる。
「こっちゃ寄るな！！」
「ちょっと痛いけど死にはしないから大丈夫だよ。はい、座り直して」
「嫌だ！！」
小さい体のどこにそんな力があるのか、はたまた火事場の馬鹿力か。ぎゃんぎゃん騒ぎ跳ねるように医務室中を逃げ回るAを捕まえるのに十数分を費やしたしんぺい神は、それでもなんとか彼を捕まえることに成功した。
「やっと捕まえた。はい、そこに座ってね」
未だにすすり泣くAに若干の罪悪感を覚えながらも消毒し直し針を刺す。
「採血終了。よう頑張ったね」
「……痛かった」
「だよねえ。大人でも痛いし、頑張ったA君には後でご褒美をあげよう」
ーーーーー
息抜きで書いたのに伸びてるの嬉しくて沢山更新しちゃう
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作者名：うるち米 | 作成日時：2022年8月13日 16時
