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◇
そうして時は現在に戻って、デート当日。
「気をつけていきんしゃいよ、お嬢。なんかあったら必ず電話するぜよ」
「分かったナリ」
「ふざけてるんじゃないんですよ、身の危険を感じたらすぐに逃げなさい」
「いやわたしどんな危険な場所に向かうのよ」
「正直日本中でもかなり危険な場所だと思ってよろしいかと思いますよ」
「うそだぁ」
「マジじゃ」
「あはは、まあ心配なのは分かったって。もう精市くん来てるみたいだから、行くね」
いつもより少し大人っぽい服装に身を包み、色つきのリップなんて塗っちゃって。精市くんと並ぶなら、あんまりガキだと思われないようにしなきゃ。そういう思考がだいぶガキだけど。
「せーいちくん!」
「はーい、わぁ、今日はちょっとお姉さんみたいだね。かわいい」
「えへ、そう〜?もっと言って」
「うんうん、かわいいかわいい」
ぽんぽん、と軽く髪を撫ぜられる。
「髪もかわいいね」
「うん、かわいいよねこれ。仁王がやってくれた」
「……へえ、そう。彼は器用だね」
「うん、あ」
複雑に編み込まれた髪の結び目を指先で辿っていた彼は、不意にするりと髪紐を解いた。
「でも下ろしてる方がかわいいよ。ね」
「あ、うん……」
少し、こわい笑顔。気のせいだ。
彼とのデートなのだから、彼の好みに合わせた方がいい。
「じゃあ行こうか。まずは美術館か」
「うん……!いこいこ!」
彼はごく自然な仕草でわたしの手を取って、指を絡めた。冷たい指先だった……。
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におー - 続き気になるッス!! (2020年10月9日 6時) (レス) id: 77a058bc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百衣 | 作成日時:2020年10月8日 17時