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吹きすさぶような冷たい北風にも似た、ひどく鋭い視線がわたしを射抜く。
控える執事たちは、わたしを守らんとちょっと前傾姿勢だ。ステイステイ。
「……うん、それはいつかは、俺と結婚する気があるってことだよね」
「え……あ、うん」
「なら構わないよ。あとまた数年待つのが長くなるだけだ」
え……?思いの外あっさり。白湯スープくらいあっさりしている。
「ただし、僕と一度、デートしてくれる?」
「調子乗んな幸村!!」
「しっ!仁王くん心の声がダダ漏れですよ!!」
びっくりするくらい冷ややかな笑みが仁王に向けられる。彼はまるで声を奪われたように立ちすくんだ。
「デート…?べつにそんな、全然いいけど……」
「本当?じゃあ交渉成立だ。また日にちを決めよう」
精市くんはうれしそうにルンルンしながらまた食事を再開した。
わたしは一世一代の申し出があんまりあっさりいったものだから、拍子抜け。
なんか、大人と子どもの差を、感じた。
わたしにとっての三年は、ほんとにほんとに長いものだけど。けどきっと彼にとっては、ちょっと待つ時間が増えるだけなんだろう。
「楽しみだね。きみと出かけるのは、本当に久しぶりだから、うれしい」
おだやかな笑みのなかには、たしかに愛情があった。そう、愛情が。
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におー - 続き気になるッス!! (2020年10月9日 6時) (レス) id: 77a058bc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百衣 | 作成日時:2020年10月8日 17時