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◇
『Aも高校、ふつうにうちの高等部行くんだろ?』
『うーん……あブンちゃんそれおいしそうだね』
『仕方ねーな、一個だけやる』
『Aは外部進学なんじゃないか、頭いいし』
『えっまじかよ!やだよー』
『うーん、まあ、どうかなぁ、わかんない』
とても結婚する、なんて言えないし。自分でも全然そんな自覚ないし。
『仁王』
『なんじゃ、お嬢』
『あのさ、あのね……わたしさ……結婚、やっぱり……』
『! ……嫌か』
『いや、嫌じゃないよ!しないといけないのは、分かってるし……でもね、わたし……高校、行きたくて』
『……言えばええ』
『え……』
『別にいつまでなんて、決まっとらんぜよ。まだしたくないって、言えばええ』
その言葉に、どれだけ救われたか。
わたしは、まだもうすこしだけ、わたしの人生を生きたい。
あの家に戻れば、わたしは……
「精市くん、あのね」
「ん?」
「言いたいことが、あるの」
「なに?かしこまって」
彼は好物の魚を食べる手を止めて、こちらを見た。彼の真剣な眼差しは、いつもわたしを苦しめる。声が出なくなりそうな感覚。
でも。
「わたしね……まだ、結婚できない」
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におー - 続き気になるッス!! (2020年10月9日 6時) (レス) id: 77a058bc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百衣 | 作成日時:2020年10月8日 17時