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◇
「お腹、いたい……」
「ほーれ見んしゃい、案の定ぜよ」
「お馬鹿さんですね、まったく」
果たして本当にはちみつの影響なのか、はたまた緊張なのか。わたしは腹痛に苦しめられながら精市くんが我が家に到着するのを待っていた。
というかわたし、はちみつに振り回されすぎじゃないか……?
「お」
「いらっしゃいましたね」
我が家のように颯爽と玄関の戸を開け入ってきた彼こそ、幸村精市その人だった。
「やあ、そろってお出迎えどうもありがとう。
相変わらずせまくるしいね、ここは」
花のような笑顔で構わず毒を吐く。彼はこの毒がいつだってわたしの好感度をダダ下げているのに気づいていないのだろうか……。
「いらっしゃい、精市くん。元気そうでよかった」
「ああ、A。きみこそ今日も元気だね。はいこれ、お花ね」
「わあ、ありがとう。バラね、こんなにいっぱい。きれ〜〜」
わたしは見るだけで明るくなれるような鮮やかな黄色のバラの花束を抱えた。
「黄色のバラ、ねぇ」
「ふふ、お嬢様。それ、24本くらいじゃないですか」
「え……いち、に、さん……わお、すごい。さすが柳生」
二人の執事はそろって精市くんを睨めつけた。しかし当の本人はどこ吹く風だ。
「相変わらず気味の悪い男ナリ」
「声が大きいですよ仁王くん。同意はしますが」
わたしの執事たちと婚約者は、悲しいことにすこぶる仲が悪かった……。
***
⇒黄色のバラ:「平和」「愛の告白」そして「嫉妬」
⇒24本のバラ:「一日中想っています」
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におー - 続き気になるッス!! (2020年10月9日 6時) (レス) id: 77a058bc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百衣 | 作成日時:2020年10月8日 17時