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そこからはべつになんてことないデートだった。
精市くんが行きたいって言った美術館に行って、やっぱり絵はよくわからんなぁとかわたしがぼやくのを、精市がクスッと笑ったりして。
そのあとわたしが行きたいって言ったカフェに行って、すごい大きいパフェとかパンケーキとか食べて。
お花がたくさん咲いてる公園を二人でぶらぶらして、たわいもない話をたくさんした。
たまに彼が、わたしの髪をするりと撫でるくらいで。
あっという間に夕方になって、海の見える灯台のふもとの小高い丘に、わたしたちは並んで立っていた。
「精市くん、たのしかった?」
「ん?うん、もちろん」
「そっか」
「Aがいるなら、どこに行ったって楽しいよ」
きゅ、とわたしの指先を握った精市くんの手は、やっぱり冷たかった。
「A」
「んー?」
「もうひとつ、お願いしてもいいかい」
「ん?いいよ、なに?」
瞬間。
あたりが一気に真っ暗になった。日が落ちた?いや、ちがう、なにも、見えない……
「キスしよう、A」
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におー - 続き気になるッス!! (2020年10月9日 6時) (レス) id: 77a058bc3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百衣 | 作成日時:2020年10月8日 17時