幸福の怪人百面相 2【男主】

84話 ページ36

『きっと､今の俺の顔は

痛みに耐えきれず(････････)､涙で汚れた顔(･･･････)になっているだろう?





だって､全部






┄"君が望んでした行動だろう?"』





チリ･ペッパーは､目を見開いた




そして､今迄感じたことの無い"モノ"を感じた









Aの顔と声は､明らかに"反発"していて

"普段通りの声だが､表情が狂気に充ちている"

"表情は悪魔そのものなのに､口調が聖母のよう"






口に出した表情とは､とても程遠いものだが

正に､"怪人百面相"の名に相応しい

この世のモノとは思えない表情になっていた





チリ･ペッパーは､必死になって電線ケーブルの中へと逃げ込んだ




完全に電気になる前に､視線を感じてAの方を見た









『2回目､か…

┄3回目が､来なきゃいいのにな』



彼は微笑んで


左手で"狐の手"を作り､ｺﾝｺﾝと鳴いてる様に左右に軽く動かしていた







"狐の耳"部分となる､立った2本の指が､まるで今の"自分の状況"の様で




┄背筋が軽く､凍った気がした









┄┄┄┄┄

Aの後ろ姿を見ていた4人は､声を出せずにいた



承太郎は以前､電話越しでチリ･ペッパーと話す時の"煽りの入った､柔らかい口調"を聞いていたが


先程の其れは､また違った雰囲気を醸し出していた





┄切り離された右腕の傷口からは
ずっと"鮮明な赤"が流れ落ちているのに､其れを全く気にしていない態度


┄承太郎だけが分かる､以前の口調より更に"相手を惑わす色気を含んだ"声色


┄自らの流れを作り､無意識に相手を流れに乗せる為の話術




そして┄






仗｢…A､さん?｣









『┄ん､なんだい…東方少年?』



仗助の弱々しい声に反応し､こちらを振り向いた時の



┄明らかに､いつもは見せない張り付いた"笑顔"






4人が固まっていると､ふとAが目を瞑った





┄その直後､自らの体重を支えきれずに前に倒れ込む



康｢┄ｯAさん!!｣


我に返った康一が､声を荒らげて"エコーズ"を彼の元へと飛ばす









┄ﾀﾞﾝｯ!!




しかし､Aはそのまま倒れる事はなく

"片足をしっかりと前に踏み出して(･･･････････････)自らを支え直した"





そして┄









『┄ｯｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ!!』






"表情は痛みに歪み､其れに耐え切れなかったように悲痛の叫び声を上げたのであった…"

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