58、誘い ページ10
「宴だァ〜〜！！！」
島に着くや否や、島民たちから歓迎の宴が催され、瞬く間に辺りは賑やかな空気に包まれた。
久々の上陸に浮かれ、酒を片手に好きに騒ぐクルーたち。ステージでは夏島らしく、生地の薄い衣装で着飾った見目の整った女たちが舞っている。
どうやらこの島にあるそういう店の人が混じっているらしいが、僕には関係のないことだ。
下心のありそうな目で見ている男どもはまぁあとで行くのだろうし、なんならそこそこな人数、既に女性に捕まっているようだが。
近くの皿に乗っていた果物を一つ、口に放る。
遠目に、隊長たちに言い寄って行く女たちが見えて、Aはほんの少しだけ微妙そうな顔した。
「おっ、キレーなお姉さん！ねね、暇？」
「用件によるね。なに？」
貼り付けたような笑みを浮かべてAは話しかけてきた見知らぬ若い男にそう尋ねる。
彼女が白ひげ海賊団の戦闘員であることを知ってか知らずか、男は機嫌良く口を回した。
「いやぁ、俺と一杯どうかなって！いい店知ってるんだよ」
「飲むだけなら構わないけど、もしそういうお誘いなら断るよ。か弱い女がお好みなら僕はお門違いだ」
どうでも良さげに酒を煽るA。
男はきょとんとした後に、目を細めて実に楽しそうに声をあげた。
「知ってるさ。ナースじゃなくて戦闘員だろ？あんた。それをわかって誘ってるんだ」
「……へぇ？」
今度はAが意外そうに声をあげる番だった。男の目は彼女のすらりとした腕や、しなやかな体に向けられている。珍しく肌の見える服を着たらこれである。服買いなおそうかな。
「タイプなんだ。俺とどうだ？」
物好きだなぁ、なんて他人事のように考えながらAは男の背後を見る。
そして貼り付けたものではなく、Aは愉快そうに笑っていた。
「残念ながら相手がいるんだ。せめて後ろの彼より強くなってから出直してね」
別に強さはどうでもいいのだけど。
男が振り向くより早く、彼の手が男の肩に乗せられる。
恐る恐る振り向いた男は、口角を引きつらせてその名を呼んだ。
「十六番隊隊長の……イゾウ、さん……」
「大人しく諦めるんだな。おれの女だ」
笑顔で言ってのけたイゾウは、目は笑っていなかった。
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