【ONE PIECE】時は巡る。2 (ページ29)

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76、些細な気づきページ29

結局のところ、Aは絶対安静で症状のほうは原因不明の結論がついた。オヤジの持病と似てはいるが、進行の早さもあまりにも突然すぎる発症も説明がつかなかったからだ。
Aはそれを聞いて笑っていた。そうだろうね、とゆっくり肩を上下させながらA自身が感じている見解を口にする。

「多分、オヤジの持病を模倣してるんだよ。だから似てても別物なのかな。暫く経てば治るだろうけど……完治までに僕が耐えきれなきゃ、恐らく普通に死ぬ。いつ治るかもわからないけど、今回はそういうものなんだろうね」

Aは簡単にそう言って、また小さく咳をした。今度は長く続かなかったが、Aの手のひらにはまた血が付着していた。

「大丈夫、治すよ」

Aは手のひらに視線を留めて俯いていて、表情は見えなかった。

それから一週間。
Aの体調が良くなることはなく、それどころかたまに高熱が出るようになっていた。熱の出るタイミングは不定期で、すぐに引くときもあれば一日中続いたりもする。体調の急な変化にもAの体力は奪われていっていた。
Aの瞼が持ち上がり、熱で潤んだ紫色の目が覗く。Aは首を動かして辺りを見るが部屋には自分以外に誰もいない。
今のAを、風邪を拗らせたと船全体には説明してあるので、他の者は部屋に長く留まれないのだ。風邪だと言った手前、患者の部屋に留まり続ければ移る可能性を危惧される。病ではないため移らないのだが、付きっきりにはなれないようになっていた。
風邪ということになっているのは、オヤジの病が治ったタイミングで、不幸な話はしたくないとAが譲らなかったためであった。
オヤジの病は完治したことは、もう船全体に伝わっていた。
おかげで連日、部屋の外からどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。みんなはしゃぎにはしゃいでいるのだろう。
Aは体を起こしてベッドサイドに置かれたテーブルの上を見る。書き置きと共に、水と薬が置いてあった。

(“熱があるようだから起きたら薬を飲んでおくこと。何か欲しいものがあったら書いておいてくれ。また来る”……イゾウの字)

コップに注がれている水はまだ冷たい。入れ違いになったのかもしれないなと思いながら薬を飲み、コップを置いた。

ふと、廊下から足音がして、部屋の前で止まる。
気配からして隊長格ではない。……隊員？だとしたら、このタイミングで何の用だろうか。僕の部屋にはあまり近寄らないようにと言い含められているはずなのに。