【ONE PIECE】時は巡る。2 (ページ28)

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75、不調ページ28

イゾウはAの背中に手を当てて擦るが、Aの咳は止まらない。
Aは暫く咳き込み続けて、ゆっくり落ち着いていった。Aが肩を上下させて息を吸う。そして口に当てていた手のひらを見て、顔を歪めた。

「！！A、それ」
「……」

手のひらは真っ赤に濡れていた。また血を吐いたのだ。

「手、洗ってくる」

ベッドを抜け出して、少し覚束無い足取りでAは数時間前のようにシャワールームの方へ向かう。
すぐに傍に付いたイゾウが、Aの手を引いて扉を開けた。数時間前のときは倒れそうだったのでシャワールームに入ったが、洗面台はあるのでそちらで血を流した。ふと、顔を上げて鏡を見る。酷い顔色だった。

「……はは、こんな顔色してたんだ」

自分でもわかるほど嫌に白い、血の気の失せた顔をしていた。

「船医を呼んでくる。バレたくない、なんて言わないな？」
「言いたいところだけど……許してくれないでしょ」

鏡に映る自分から目を離して俯く。Aはいつも困ったときにするような苦笑いを浮かべてはいたが、眉間には皺が寄り、額には汗が滲んでいた。

「……早く戻ってきてくれると嬉しい」
「あぁ。すぐ戻る」

再びAの手を引いてベッドに座らせる。
Aが、繋がれた手をぎゅっと握った。Aの指先は冷えきっていて、まるで氷のようだった。

「待ってるね」

そう言って微笑むAに見送られて、イゾウは部屋を後にした。

・

医務室に駆け込んだイゾウと鉢合わせたのはマルコで、イゾウはマルコを連れてAの部屋に戻った。
Aはベッドの上で壁に凭れて座っていて、二人が来るなり目を細めて微笑んだ。相変わらず顔色は悪い。部屋に来る道すがらイゾウの知る限りのAの状態を聞いていたマルコは、Aが思っていたよりも悪い状況にあると察して眉を寄せた。

「わざわざ来させてごめんね、マルコ隊長」
「そんなことはいいよい。それより、おまえいつからその調子なんだ」

マルコは元々イゾウが座っていた椅子に腰を下ろして問いかける。Aは一瞬マルコから目線を逸らして、しかしすぐに戻した。誤魔化そうとして誤魔化すだけ無駄だと悟った動きである。

「四日前くらいから。露骨に酷くなったのは昨日で、血を吐いたのは今日だけ」

マルコが更に眉間の皺を深くする。Aは今度こそ目を逸らした。