74、なんとなくの予感は当たって ページ27
横になったほうがいい、とは言われたし同意もしたものの、流石に短時間で寝すぎていて横になるのはなんだか落ち着かない。体を起こしたままイゾウに尋ねる。
「ねぇ、今何時？」
「ん？……大体二十一時だな。いつから寝てたんだ？」
「…………十八時ごろ……」
気絶の四時間と合わせて、合計七時間ほど寝てしまっているようだ。本当に寝すぎている。
時計を見るために立ち上がり、もう一度椅子に座ったイゾウは、苦笑いするAの顔色を見た。まだ、血色が良くない。最初よりマシだが、それでもまだ青白かった。
何となく様子が気になってAの部屋を訪れたのが一時間前。何度かノックはしたものの無音で、ドアノブを捻ると無用心にも鍵はかかっていなかった。どうかとは思ったものの、そっとドアを開けて室内を見てみると、青い顔をして椅子で寝こけているAがいたので、一先ずベッドに移動させて様子を見ていたというわけだ。
それに、どうにも宝珠がない。最近今にも割れそうなほどに亀裂が入っていたから、とうとう割れてなくなったのだろう。Aの体調不良も、タイミングが良すぎるのでそれに起因していると考えてよさそうな気がした。
「A、宝珠は？」
確信を得るために尋ねてみる。
Aはイゾウを見て、次いで笑った。
「割れたよ。オヤジの病、完治したんだと思う。まだ誰にも言ってないけど、医療チームが気づくのも時間の問題じゃないかな。検査をして結果が出たら、すぐ船中に広まるだろ」
「そうか。良かった……」
イゾウもつられて笑った。オヤジの病が治ったことは嬉しい。だが、目の前のAのことを放って手放しに喜べるわけもなかった。
「じゃあ不調は宝珠が原因なんだな？」
「……そうなるね。隠そうとしてた。ごめん」
「隠して何になる」
「そのほうが皆、純粋に喜べるかなって」
Aは正直に本心を話す。以前気を遣うのはやめる、と言った通り、イゾウ相手でAは特に素直だった。イゾウもそれをわかっているので、Aが自分から言わないだけで、話してもいいと思っていることを引き出していた。
「症状は？その感じだと頭痛はあるようだが……」
「頭痛と……、……ッ」
言いかけた途中で、Aが胸を抑えて踞った。
のろのろと持ち上げた右手を口元に当て、小さく咳き込む。小さな咳は、すぐには止まってくれなさそうだった。
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