【ONE PIECE】時は巡る。2 (ページ23)

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70、灯りを囲ってページ23

ハルタに見張り番を引き継いで、Aはゆったりと船内を歩いていた。あと二時間もすれば誰かが起き出す頃だろうか。
固まった体を伸びでほぐしながら自室に向かう。
そうやって床板の軋む音だけを聞いて歩いていると、ふと何処からか話し声が聞こえた。密やかな声ではあるが、船内があまりにも静かなせいである程度聞きとれる。
確かに、少し先のドアから薄ぼんやりとした灯りが漏れていた。その場所はいつかの大部屋だった。
気配からして何人か集まって雑談でもしているんだろう。それにしては声が密やかすぎるが。時間も遅いし。

(……、悪戯に開けようかな)

別に通りすぎても良かったのだが、無性にそんな気になって音もなくドアノブに手をかけた。
そして普通に開けるか静かに開けるか迷って、結局普通に音を立ててドアを開ける。

「ギャーー！！悪霊退散悪霊退散！！！」
「うるさ……オバケじゃないんだけど」

開けた途端に驚かれ爆音で叫ばれ、Aもそれにびっくりして肩を揺らした。大分響いたんじゃなかろうか。呆れたようにため息をついたAは辺りを見渡す。蝋燭数本の心許ない灯りを囲っている気配は毎度お馴染み隊長たちだ。なにやってんの？
叫び散らしてきたサッチにAは首を傾げる。

「こんな時間に何やってるの？サッチもサッチで人の顔見て悪霊退散って何事……」
「せっかく夏島だから怖い話してたんだよ。そんで突然後ろのドア開いたらそりゃ驚くだろ」
「せっかくも何もって感じだなぁ……」

丑三つ時に馬鹿やってるなぁと苦笑いした。
楽しそうで何より。

「悪戯に開けただけだから、僕部屋に帰るね。それじゃ」

居座る意味もないと踏んでドアを閉めようとすると、ちょいちょいちょい！とサッチが叫んでAを引き留める。まだ何かあるのか。

「どうせなんだ、おまえも参加しろA！それとも怖いか？」

にやりと笑うサッチにAはため息をついた。なんだその安っぽい煽りは。

「参加していいけど、僕持ちネタなんかないよ。それでもいいの？」
「聞くだけだって歓迎だ！！よっしゃ、じゃあ入って入って！」

そうやって招かれて、改めて周りを見渡す。
……いや見づらいな……灯りが絶妙で……。エースがいることはわかる。

「A」

少し奥から声がしてそちらに焦点を合わせると、イゾウが笑顔で手招きしていた。
何処にでもいるなぁこの人。