68、澄んだ青空 ページ21
さて、そうは言ったもののみんなが楽しそうに遊んでいるとやっぱり多少は暇に感じる。
波打ち際で水を掛け合ったりどこからか持ち出した水鉄砲で遊ぶナースたちと結構遠くまで出てサーフィンやら泳ぎ対決やらをする男ども、どちらもいつもより眩しい。
元気いっぱいで良いことだ。
……しみじみ思ってしまう辺り、歳だろうか。
「気のせい気のせい……いい天気だなぁ」
例え遊んでいなくとも伸び伸びとした休日は悪くない。寝るにしてはやかましすぎるが。
「暇ならおれと遊んでくれないか？レディ」
「！……手を引いてくれないと行かないわ」
「くっ、ははは。Aが望むなら勿論」
背後から聞こえてきた声とわざとらしくやり取りをして、くるりと声の主を向く。ついでに手を差し出すと、彼は掬いとるようにして僕の手を取った。
「ふふ、待ちくたびれたよイゾウ」
「そりゃ悪い」
まるで悪びれる様子もなく手はそのままに隣に座る。珍しく下ろされた髪は高いところで結ばれていた。
「水着、似合ってる。おれの見込みに間違いはないな」
そう言って微笑む姿は、なんだか夏島の日差しより眩しい気がした。惚れた弱味というやつだ。
普段はしない格好で、恥ずかしいのも相まってAは僅かにそっぽを向いた。わかりづらい照れ隠しだった。
「ありがとう」
二人の間に何とも言えない、悪くない空気が流れる。ビーチパラソルの下を出ればたちまち騒がしくなるというのに、まるでここだけ違う空間かのようだ。
そしてそれを目敏く見つけたサッチが、持っていたビーチボールをサーブの要領で二人のもとにぶっ飛ばした。
流石にそんなものに当たるような二人ではないので、さっとボールを見たが、先に動いてボールを止めたのはイゾウのほうだった。Aはちょっとだけ動きが鈍かった。
「……びっくりした。あれわざとだよね」
「十中八九そうだろうな」
遠くからサッチが片手でボールを持ったままのイゾウを指差して、「イチャついてんじゃねーぞこっちこい！！」と叫んでいる。
「行く？行くんだったら僕も行きたい」
楽しそう、と付け足してAは笑う。いつもよりずっと気が緩んで楽しそうなAの手をイゾウは優しく引っ張って立ち上がらせた。
「じゃあ行くか」
手は繋いだまま、二人は砂浜を歩きだした。
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