65、夏島といえば! ページ17
翌日、本当に呆気なく根城潰しが終わった。
捕まっていた人たちも無事解放し、この島の住人だった人たちは家族の元に帰ったし、別の場所から拐われてきた人たちを送る手筈も整えた。オヤジにもそう報告したところ、嬉しそうに笑ってくれたのだった。
が。
「夏島といえば水着に着替えて海で遊ぶってなに……」
心底めんどくさそうな顔をして、Aは夜の船内を歩きながら一人ぼやいていた。
数刻前、ナースたちに海で遊びましょうよ!と誘われ、ナースが行くならおれたちも!!と野郎どもが盛り上がり、白ひげ海賊団総出でビーチを貸し切ることになったのだ。
あまりの盛り上がりぶりに断るわけにもいかず、その場ではいいよとは言ったものの水着なんて持っていないし買う気もない。海で遊ぶ話のあと、書類仕事をしていたからすっかり時間も経ってしまったためどうせ店も開いてない。
能力者だから海に入る気もないが。
……かと言って普通の服で行ったらナースたちになんでと言われるに違いない。
「
最小サイズでマスコットと化せばあるいは……。
……いいや絶対怒られる。ナースたちが普段通りの自分と遊びたがってくれているのはわかるので、そんな姿で居座れば怒られる以前に残念がられもするだろう。それに最小でも三メートルだ。大きい。
(どうしよう)
明日ナースに借りるのが最善策だろうけど、どんな水着が出てくるかたまったもんじゃない。際どすぎるものが出てきて着させられる未来は避けたい。
がちゃ、と自室のドアを開ける。
そして自分の机に鎮座する、見慣れない紙袋に心底嫌な予感がした。
「……、まさかね」
近づくと紙袋の下に折り畳まれた紙が挟んである。
引っ張り出してそれを開くと、案の定紙袋の中身についてのメッセージ。見知ったナースたちの名前が書いてあった。複数人で行って、その場のノリと勢いで全員分の名前をメモに書いたのだろう。
曰く、
『Aは水着を持ってないと思ったので、代わりに連れて行ったイゾウ隊長にAの水着を選んでもらいました!着てね!』
「複雑だ……」
紙袋の中身は確かに水着だった。
百歩譲ってありがたくはあるが、イゾウも含めて四人くらいで僕一人分の水着を選びに行かれたかと思うと、額を抑えずにはいられなかった。
……いや待って。そもそもなんでサイズ知ってるの。
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