63、どうやら島中に轟いたようで ページ15
(一切情報が無かったとなるとな……。僕はともかく、イゾウに挑むような計画性の無さからして、小規模なだけだと思うけど)
ちらりとイゾウのほうを見ると、彼も何やら思案顔で、黙って口元を手で覆っている。
しかしまぁ、あとで仕事になること間違いなしな案件だし、今は目の前の処理が先決だろう。
そう考えてびびり散らす憐れな輩に向かって一歩踏み出した。
「ひっ」
「流石に心外なんだけど」
見事後退りをされて、Aは不満そうに立ち止まった。これではまるで僕が悪者だ。海賊に善も悪もないが、襲われた側としては不本意である。
さてこの人数を二人でどうするか。そこまで考えたとき、ふと、多人数の気配を感じた。
「……なんか来てるね」
先に気づいていたらしいイゾウは、既に気配のするほうに視線を向けている。遅れてAもそちらに顔を向けた。そして彼らを視認して、失笑した。
……大方、僕の咆哮を目覚まし代わりに飛び起きて、異常があったのかと慌てて走ってきたのだろう。我ながら中々に煩かったので、そこまで広いわけでもないこの島中に良く声が響いたに違いない。
港のほうから走ってくる白ひげ海賊団の一部面々を、Aとイゾウは顔を見合せて笑った。
「
「どうせ起こすまで起きない二日酔いどもだ。丁度いいだろ」
Aは笑顔でクルーたちに手を振る。
振り返す余裕のないクルーたちは、Aとイゾウの元に辿り着くなり息を切らしたまま辺りを見渡す。
寝起きで全力疾走は疲れるだろうなあ。
「なにがあったんですか！」
「その辺に転がってる輩をAと相手してたんだ。シマでルールを守れない馬鹿どもだから、連れてくぞ。根城も聞き出す必要がある」
「！了解です、イゾウ隊長」
クルーの一人がイゾウに尋ねて、そのまま一緒に来ていた面子と共に戦意喪失している男たちを一ヶ所に集めていく。せめてロープでもあれば良かったのだが、生憎ロープを持ち歩いているやつはいない。
「ロープ取ってくるよ。他に何かいる？」
「あ、それならラクヨウ隊長拾って来てくれ！多分港に落ちてる！」
「ふふ、了解」
クルーの要望を聞き届けて、羽を広げて空に飛び立つ。あのクルー、ラクヨウのとこの隊員だったなぁ……。隊長使いが荒くて大変愉快である。
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