62、圧倒 ページ14
片方は隊長とはいえたった二人。しかも隊長の連れは女ときた。それならば人数で押しきれば隊長相手でもなんとかなると思ったのだ。
女を人質にして脅しでもすれば、当面は楽にまた商売の準備ができるだろうと。
(浅はかだった、畜生！！なんだよ、女もバケモンじゃねェか！！)
隙のない動作でAは次々と囲む輩を切り伏せていく。反対側では武器は違えど同じように、イゾウが相手を伸していく。
傷が浅かろうが、倒れた者はみな動かない。
顔にあるのは等しく恐怖の色だ。腕に多少自信のあるヤツばかりなのにも関わらず、次元の違う強さの二人にただ顔を青ざめるさせるばかりである。
「……腰抜けが」
Aが眉をひそめてある一部を見やった。
視線の先には背中を向けて逃げ出す何人かの男たち。
「イゾウ、ちょっと外れるよ。あぁ、それと五秒後くらいに耳塞いで」
「わかった」
その場を軽く飛び上がって、空中で
逃げ出す男らの頭上を移動して、退路を絶つように降り立つ。そしてそのまま大きく息を吸い込んだ。
地鳴りのようなけたたましい咆哮が辺りに響き、びりびりと空気が震える。
正面から咆哮を受けた男たちが腰を抜かしたのは勿論のこと、既に戦意喪失気味だったチンピラたちは揃って冷や汗を流しながら、動きを硬直させていた。何人かの手からは武器が滑り落ちて、石畳にからんからんと虚しい音を立てる。
「この程度で戦意喪失なんて情けない」
涼しい顔をして人型に戻ったAは、口元に薄く笑みを浮かべて腰を抜かした男たちを見下ろしていた。
威勢良く囲んで来たわりに、なんともみっともない負け様である。
しん、と静まり返った往来を、イゾウが真っ直ぐ歩いてくる。
「呆気なかったな」
「気も弱いみたいだしね」
すっかり戦意喪失した様子の襲って来た輩たちを見回して、そんな会話をする。
あとは根城があるならそれの炙り出し、それに今まで隠れられていた理由探しだ。まだ規模が小さいのか、それとも身内に内通者がいるのか。
こういうものは大抵、大事になる前に気づくし切り落とす。僕らは大規模な海賊団だからこそ情報の管理は徹底している。特にナワバリに関しては、安全を守れなければ旗を貸す意味がないからだ。だからこそ、怪しい動きは見逃さないはずなのだが。
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