39、それはもう目前に ページ40
時は移って夜。
あのあとは特に何事もなく、サッチはサッチで実を食べるかどうかまだ迷っているようだった。
悩むのは確かに仕方の無いことだ。能力者になるのと引き換えに一生カナヅチになるんだから。
ふと窓の外を見る。午後まで快晴だったのにも関わらずバケツをひっくり返したかのような大雨だ。雷も鳴っている。
「ひどい雨だな」
「そうだねぇ。ところで僕、どうしてきみの部屋で書類手伝ってるんだろうね」
「Aが手伝うって言ったんだろ？」
「僕の記憶にないかも、それ」
イゾウは笑いながら、ほら、これと新たな書類の束を差し出してくる。
僕の手元にある書類が少なくなるとすぐこれだ。受け取りながら、そういえば、と話しかける。
「最初の分岐点ってなんだと思う？」
「あァ、能力制御出来た話のアレか……」
イゾウは一瞬ペンを走らせる手を止めるが、すぐまた書き出す。午後にもこの話はしたのだが、結局のところよくわからないね、で終わったのだ。
「午後も言ったがそうわかるもんじゃないだろうな。なんせ主語がない」
「絶対に誰も死なせないで、って言われてもね……誰かが生きるか死ぬかが重要なんだろうけど、誰かもわからないのなら守れもしないしね。午後の結論と同じか」
「考えたってどうにもならないだろうな」
その意見には同意だが、どうにも納得できない。何もできないことも事実だが。
ぐ、と伸びをする。気分転換に水でも飲みに行こうかな。
「水飲んでくる」
「じゃあおれも行く」
「書類してなよ……」
苦笑いのAに構うことなく、イゾウは書類を置いて席を立つ。
先にドアを開けて待っているイゾウに、Aも続いて、二人は食堂に向かって歩き出した。
「仕込みしてるサッチくらいかな、今食堂いるの」
「あーどうだろうな。もう遅いしいないんじゃないか」
そんな会話をしながら、段々と食堂に近づいていく。違和感を感じたのはその時だった。
Aは幻獣種とはいえ、
だから彼女がふと口を閉じ、怪訝そうな顔をした理由がイゾウにはわからなかったし、Aも自分だけが気づく程度だとわかっていた。
ぽつりと溢す。
「血の匂いだ。多分、食堂から」
「……なんだと？」
「走ろう、良くないかもしれない」
言い終わるや否やAは返事も待たずに駆け出した。あっという間に食堂までの距離を詰め、破壊する勢いでドアを開けた。
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藍色水晶 - レイラさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえるとすごく糧になります…！イゾウイケメンだと言っていただけて嬉しいです！にやけました！！更新がんばりますね！ (2021年3月22日 0時) (
レス) id: f9a0a01c83 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - この小説凄く好きです！これからどうなっていくのかなって凄く気になります！！イゾウすっごくイケメンだぁ……更新頑張ってください！ (2021年3月20日 16時) (レス) id: 3f1cc56245 (このIDを非表示/違反報告)
藍色水晶 - ヒナさん» わー！！ヒナさん…！お久しぶりでございます！また読んでくださってめちゃくちゃ嬉しいです…！！発狂仲間がいたことも嬉しいです！！！！応援ありがとうございます！更新頑張りますね！ (2021年2月15日 23時) (レス) id: f9a0a01c83 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナ - お久しぶりです！前も読んでいたので嬉しいです！！更新頑張ってください！私もイゾウが出てきて発狂しました！w応援しています！ (2021年2月14日 14時) (レス) id: fe45ff59f5 (このIDを非表示/違反報告)
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