55 【最強の定義】 ページ7
「おれが居ればお前は最強だ!!」
ぐっと自分の胸を指さして、自信たっぷりに影山に笑いかけるオレンジ少年。
及川さんのすごさを垣間見てなお、折れることなくむしろ生き生きとしてそう言う少年。
どこからそんな自信が出てくるというのか。
それは俺には全くわからないけど、最強とはそういうものだと思う。
『かっこいいっすね。俺も使いたい。』
「岩泉が言いそうなことをおまえが言うのか。」
『だってかっこいいじゃないすか!』
「……ああ、うん。そうだな。」
少々引き気味の溝口コーチに、俺は熱く語ろうとしてやめた。
ちょうど眼前で起きた、小さな巨人の真下打ちが、その熱を体内に押し戻したからである。
その熱に取って代わるように、俺は落ち着いた口調で語った。
『世の中に本物の天才がいたら、きっとクソつまらないですよね。』
「クソ……?」
最近もはや暴言になりつつある俺の一人語りに、溝口コーチは少々眉間にシワを寄せながら疑問の声を漏らした。
それに対して俺はうなづく。
『そう、クソなんです。このバレーの試合が俺たちを興奮させるのは、本物の天才がいないからだ。』
俺の語りはよくあることだから慣れたものなのか、溝口コーチと監督は、時に選手に声を飛ばしながら相槌をうつ。
だから俺は、そのまま続けた。
『でも、天才に近いものはいて、それが合わさるから“最強”とか“バケモン”とかになる。』
天才っぽい誰かと、天才の片鱗を持つ誰かと、そして少しのアクシデントと単細胞思考が合わさると、何者にも負けず劣らない天才が完成する。
影山とチビくんは、きっとそれだ。
そしてそれは、彼も然り。
凄まじい音のあとに、フラッグが振り下ろされた。
ホイッスルと同時にめくられたのは、こちら側の得点。
『ここに来てあのサーブとかバケモンかよ、恐ろしい。』
「二葉は一体何の味方なのか。」
何かを磨き続ければ、きっとそれは誰かに堂々と誇れる武器となる。
何をどうやって最強とするのか、そんなことは定かではないし大した問題ではないけれど。
『俺は、やっぱり及川さん最強だと思うんです。人間としてのクズさにおいても。バレー選手としても。』
「二葉の及川へのこの矛盾した考えは何なのか。」
「なんかAちゃん、及川さんに失礼なこと言ってない!?」
『地獄耳なんですか!』
努力の天才なんて称号、彼には生温い。
だってあの人は、俺の中の最強の人だから。
56-1 【天才もどきは開花する。化物もどきは磨かれる。そして決着は着く。】→←54-2 【ありがとう】
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千夜(プロフ) - ちゃらさん» ちゃらさん、ありがとうございます!そんなこと言っていただけてほんとに嬉しいです! (2018年3月27日 13時) (レス) id: da4d7a241b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!皆格好いいし、ストーリーが凄く好きです。 (2018年3月24日 22時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千夜 | 作成日時:2018年1月23日 23時