57-2 【俺とマネ】 ページ11
『あのさ、京谷さん。』
「キモい。」
『ひどいな、ちょっとさん付けしただけだろ。』
いつにも増して眉間のシワを深く刻み込んでいる隣の狂犬の塩対応に、俺は違った意味で眉間にシワを刻む。
十代にして眉間のシワが取れなくなりそうな人第二号は、箸を動かしていた手を止めて水に手を伸ばした。
それは、素直じゃない京谷らしい、話を聞いてやるというサイン。
俺は、その行為だけで、すでに満足だ。
京谷が、俺の軽くふざけたノリを無視せずに付き合ってくれるだけで十分嬉しい。
そうは思うものの、せっかく聞いてくれるそうだから、俺はずっと尋ねたくて仕方なかったことを口にした。
『今日の試合、どうだった？』
いつか、京谷に同じように尋ねたことがあった。
あのときは、まだ京谷はチームの一人じゃなくて。
孤独で、一匹狼気取って。
自分は強いと、そう信じているのに、どこか怯えていたような。
京谷は、前と同じように俺の方を見ずに答えた。
でも、視線は前を向いていた。
「思ったより、悔しかった。」
まあ、悪くはなかった。
そう返ってこないことに、なんだかすごく安堵した。
笑えるような回答じゃないけど、俺の頬は自然と緩む。
「笑ってんなよ。」
『笑ってないって。』
上がる口角を誤魔化すように、頬をぐりぐりと押さえつける。
それでも、どうしても顔はニヤけた。
「そういうおまえは、どうだったんだよ。」
俺に笑われたことが不服なのか、京谷は、一層縦のシワを増やして俺にそう問いかける。
どう、か。
小学校の頃からバレーをし始めて、中学ではレギュラー入りして、スタメンにもなって。
何度も何度も試合に出た。
あのコートの中に立った。
試合がどうだったかなんて、考える必要もないくらい、ただ純粋に楽しくて。
でも負けたらその分悔しくて。
得られる感情はどこまでもシンプルだった。
でも、あの日から、試合の意味を考えるようになった。
自分の存在理由に疑問を抱いて、及川さんの合言葉も胡散臭いと感じていた。
そんな自分が嫌ですらなくて、そう考えることがあたりまえだった。
でも、今回は、どこか違った。
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千夜(プロフ) - ちゃらさん» ちゃらさん、ありがとうございます！そんなこと言っていただけてほんとに嬉しいです！ (2018年3月27日 13時) (
レス) id: da4d7a241b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです！皆格好いいし、ストーリーが凄く好きです。 (2018年3月24日 22時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千夜 | 作成日時：2018年1月23日 23時
