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ヤツ ページ2

道栄志遠は幼少期から絵画の天才と呼ばれていた。
私はそんなヤツの作品を幼い頃からずっと見てきた。
透き通る青や燃える情熱の赤を私は彼から学んだと言って過言ではない。
大好きだった。彼の描く絵が。
けれど好きという感情は作品から次第に、作者であるヤツに向いていった。
ヤツと隣にいたいという理由から私も絵を描き始めた。幼稚園の頃はクレパスにありったけのぐちゃぐちゃ。小学校は色鉛筆で色とりどりの丸。中学校は水彩で鮮やかな花。そして高校では油彩で大空を。
私がやっとの思いで花を描けた時、ヤツは三十枚もの表彰状を貰っていた。
私がやっとの思いで大空を描けた時、ヤツは個展を開いていた。
差は歴然としていた。才能の違いを感じて、絵を描くことが嫌いになったこともあった。それでも私はヤツの隣にいたかった。
そして気付けば私とヤツは、いわゆる幼馴染という関係になっていた。
「まだ決まらないの?」
「うん」
「いつものことだけど、見てるこっちがすごく焦るんだよね」
「……でもちゃんと仕上げる」
「それがすごいと思う」
そこまで言うとヤツは半笑いして手にしてた木炭をぽきっと折ってしまった。

早朝→←コンクール前の。



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作者名:ゴリラ | 作成日時:2018年9月13日 23時

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