二日目 ページ9
【Aさん視点】
少し遡ること数分。
「あの子、無事に記憶を取り戻せるといいのだけれど。」
何処か儚い表情の少女を思い出し、切実に思った。
「Aさん、書類はいいんですか？」
「しかも、災藤さんに言ったんですか、ここに来ること。」
「あー…まあ大丈夫でしょう。多分。」
「確信はないんですね。もう…」
そう溜息をつく抹本。
彼は私の知っている獄卒の中でも一番といっていいほど心配性だ。
自分に対しても相手に対してもよく眉間に皺を寄せて困った顔をしている。
肋角さんのところの佐疫くんもなかなか心配性だと思うけど、私からしたら彼は斬島くんに対しての心配性だと思う。
「ほら、抹本。上の薬品取ってあげようか。」
「大丈夫ですよ…あ、そこらへんは危ない薬品が多いので気を付けてくださいね。」
「ふふ、大丈夫だよ。お前は自分のことを心配しなさい。」
「水銀さんに悪戯されたりしていない？」
「ふぇ…！？なんでわかるんですか？」
「あの人は君みたいな気の弱い子が大好きだからね…」
「俺、いつか食われそうで怖いです…」
「冗談はやめなさい、彼女はいい人だよ」
そんな他愛ない話をしながら二人で必要な薬を探していた。
この子はいつも一緒に居てあげられるけど、あの子達は元気だろうか。
個性豊かな後輩達を思い出し、くすりと微笑む。
「急にどうしたんですか…？」
「いや、懐かしいな…と思ってね。」
「何がです？」
「いや、別に？」
不思議そうに私を見上げる彼をよそに"近い日にまた会えるだろうか"と心を弾ませていた。
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Aさんはいい人なんだよ…
獄卒達よ早く来い
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作者名：みおしゃんこ | 作成日時：2017年8月15日 8時
