25話 ページ26
〈狩穴〉にうつり住んで、はや四ヶ月ちかくがすぎさり、
山にようやく雪どけがはじまったある朝、チャグムにふしぎな変化がおきた。
その朝、いつもはねおきのよいチャグムが、なかなかおきてこなかった。
「ほれ、チャグム、いつまでねてるんだい?」
バルサが布団をはごうとすると、チャグムはとろんとした目で、バルサをみあげた。
「・・・バルサ、おれ、だるい。からだが重いんだ。」
バルサはチャグムのひたいに手をあてて、首をかしげた。
「風邪でもひいたのかね。──べつに熱はないようだけど。タンダ、ちょっと!」
バルサがふりかえると、湯をわかすフィアと、それを見守るタンダが顔をあげた。
「チャグムがぐあいがわるいっていうんだけどね。」
タンダはチャグムのようすをしらべたりしたあと、チャグムにきいた。
「だるいほかに、なにかかわったことはあるかい?」
「ねむい。──地の底へ、ひきずりこまれ、る、みたい。」
そういったかと思うと、チャグムはまた、ねむってしまった。
「これって、れいの卵のせい?」
「さてな。ただの風邪にしちゃあ、ちょっとようすがおかしいな。
──そろそろ春だし、卵がそだちはじめて、チャグムのからだに変化がおきているのかもしれない。フィア、なにかわからないか?」
しかし、フィアは首を横にふった。
タンダは、手のひらをこすりあわせてから、目をほそめ、
口の中でぶつぶつとなにかをつぶやきながら、チャグムの胸のあたりに手をかざした。
手を爪のあとがくっきりとのこるほど、にぎりしめてみていたフィアは、
タンダの手がぼやけてみえるのに気づいた。
チャグムの胸もタンダの手と同じようにぼやけはじめている。
タンダは、胸から手をはなすと同時に、まるで水の中から浮かび上がったかのように、
大きく息をついた。
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サヤノ - 清少ナゴンさん» 初めまして、サヤノと申します、精霊の守り人シリーズが大好きです、故あって愛読しております、タンダ特製山菜鍋も美味しいくらい想像が膨らみます、よろしくお願いします。 (9月29日 11時) (レス) id: 8a917fb5a5 (このIDを非表示/違反報告)
真顔君 - 頑張って下さい! (2018年8月6日 15時) (レス) id: 121ee4e48d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゴンナゴン | 作成日時:2017年12月19日 19時