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「善逸」
あっ言うの忘れてた、と
そう思った瞬間に彼の名前を呼んでしまった私。
呼んですぐ、後悔した。
私はパッと言葉を発するのが苦手で、どうしても吃ってしまうからだ。
だから急に相手に声をかけられる時なんかは特に酷くて、よくみんなに笑われていた。
喋る準備をしてからじゃないと、上手く喋れないのだ。
ん?とこちらを向いた善逸に、早く喋らなきゃと思い焦って口を開いた。
「あ、あっ、まっまだ!言ってなかった!から!
その、おつかえさま...!」
反射のように出た言葉は吃音のオンパレード。
やっぱりこうなる。おまけに噛んだ。
あまりに酷い喋り方で落ち込みそうになったけど、当の本人は嬉しそうに笑って、ありがとう!なんて言うもんだから、気にしなくていいのかなと思えてくる。
本当は分かってるんだ。
こんなふうに私に普通に接してくれる人は、世の中にほんのひと握りしかいないということ。
施設の人たちはみんな、決まって気まずそうな色や見下すような目をするから。
「Aー!!!俺様のお帰りだぞ!!!」
「Aただいま!ここでの生活にはもう慣れたか?」
「おっ、おかえりなさい。うんっ」
さらに続け様で二人から声をかけられて戸惑ったけれど、なんとかきちんとそれぞれに返事をする。
どちらかを無視したなんて思われたら大変だ。
猪頭の、私を子分の様に扱う人は伊之助。
態度が大きいし暴力的なので苦手意識があるけれど、彼も気さくに私に話しかけてくれる。
それに何故か、私の名前だけは言い間違えないらしい。
実はそれがすごく嬉しかったりする。
そして相変わらずキラキラした笑みで笑いかけてくれるのが、炭治郎。
良かった良かったって安心した表情で言ってくれる炭治郎は、気遣いができてほんとに優しい。
「良かった、無事で」
こうやってみんなが無事に帰ってきてくれて、とても安堵する。
みんなは鬼殺隊という隊員で、鬼を倒しているらしい。
特別な能力を使う強い鬼とも戦わなくちゃいけないみたいで、毎日心配で仕方ない。
でも世の中の役に立つ仕事をしていて、とても尊敬する。
だからこそ、なのかもしれないけれど。
みんなへの尊敬が大きくなればなるほど、
周りの色ばかり気にしてる臆病な私とは大違いだって、引け目を感じてしまうのだ。
いつか私も変われる時が、
みんなみたいに立派になれる日が来るのだろうか。
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あーちゃん - すごいいい話ですね(*´∀`)これからも頑張ってください。 (2020年6月10日 9時) (レス) id: 20ef85385a (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 花帆さん» 雰囲気や距離感は結構こだわっているつもりなので嬉しいです!!笑 満足して頂ける作品になるよう頑張ります! (2020年1月3日 20時) (レス) id: 8e770ef89c (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!炭治郎優しいし、かっこ良くて良いです(*´ω`*) 炭治郎と夢主さんのほんのり良い雰囲気、応援したくなります/// (2019年12月18日 4時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 花帆さん» 炭治郎かっこいいですよね!!ありがとうございます´`* (2019年11月24日 17時) (レス) id: 8e770ef89c (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - らんさん» 多忙の為更新遅いですが、頑張って書いていこうと思います...!応援ありがとうございます! (2019年11月24日 17時) (レス) id: 8e770ef89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のの | 作成日時:2019年10月23日 20時