・ ページ2
.
飢えていた。
端的に言ってしまえば。
何にと問われれば、愛情に。
形がないそれのはずが、俺の中ではぽっかりとした空洞となっている。
幼少期よりずっと、この穴は埋まらない。
埋める努力をしていたつもりだった。
しかして、未だに空っぽなのは期待した結果を得られていないからだろう。
満たされたことがなかった。
そんな子供でも、時は勝手に過ぎていき、成人した俺は社会で一人、生きていく。
無趣味のつまらない人間。
平坦な毎日。
同じことの繰り返しをし、時はまた勝手に過ぎていく。
生命維持に必要なことだけをし、寝ては覚め、仕事をし、また寝ては────そんな機会仕掛けの日々の中である事が起きた。
発端は、迷子。
昼休憩。
弁当を買いにコンビニへ行く最中、親とはぐれ泣き喚く子供を見つけた。
俺と同じくコンビニに立ち寄るスーツの男たちが行き交う中、その迷子は泣き続けるも誰一人として、目を合わせようとしなかった。
面倒ごとに巻き込まれたくない。
誰かが対応してくれる。
昼休憩という貴重な時間を裂きたくない。
等々、俺も思いつく限りの理由で誰もその迷子に声をかけることはなかった。
その流れに乗るつもりでいたが、泣いて自己主張をしても相手にされない────そこにいないかのように扱われる子供を見ていたら、嫌な気分に陥った。
お母さんお母さんと、迷子だからこそそう叫ぶのに────俺には昔の自分が重なってしまった。
どんなに叫ぼうが、俺は存在しない。
叩かれることもなく、ただひたすらにいない子として扱われてきた俺は、やはり泣くことしか出来ずにいて……
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 772人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みく(プロフ) - 日向さん» 自信持ってください！私は日向さんの作品大好きですよ！！ (2017年1月8日 22時) (
レス) id: 885612460c (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - みくさん» なんと、そういう風に言って頂けるなんて、私めは幸せです:-) 確に、ゆるいお話も私の大切な作品の一部ですし、なんとか自信をもって頑張ります…！ (2017年1月7日 19時) (レス) id: d5d017206e (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 日向さん» あらぁ、残念…なんて 笑 ジンくんの家にいることが…とか、ストーカーさんみたいなゆるいお話は楽しみながら読めるのでそれはそれで良さがあって素敵なお話だと思ってますよ！頑張ってください (2017年1月6日 21時) (レス) id: 885612460c (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - みくさん» そうなんです。いやいや、褒めても何も出ませんよ…。最近ゆるいお話しか作れなくなって来たので、そう仰って頂けるととても嬉しいです:-) 頑張ります。 (2017年1月5日 15時) (レス) id: d5d017206e (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - (#ﾐﾝ ｾﾅ)さん» わざわざお返事ありがとうございます^ ^ 作品を読んでいたのにコメントせず申し訳ない気持ちでいっぱいですTTミンセナさんの更新も楽しみに待っているので頑張ってください (2017年1月5日 12時) (レス) id: 885612460c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：( #ﾐﾝ ｾﾅ ),日向
x他1人 | 作成日時：2017年1月1日 12時
