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第4話 隠した気持ち ページ5

「お初お目にかかります。鬼塚Aと申します。この(たび)は、命を救って頂きまして、ありがとうございました」

 快晴の()る日。
 一人の少女が、組織の長に頭を垂れていた。
 最上階に位置し、柔らかな日差しが入ってくる首領(ボス)の部屋に、Aと俺。姐さんと太宰が一同に(つど)っている。

「どういたしまして。ところで、君は、中也君の補佐だけでなく、仲間の統率を影ながら行っていたようだね」
「はい。微力でしたが」
「そんなに謙遜になる必要は無いよ。太宰君が(ひき)いた部下達も、相当手こずったんだから」
「…そうですか。では、頭脳と救われた命を、貴方のために使います」
「ポートマフィアにようこそ。鬼塚A君」

 こうして、幼馴染はポートマフィアに正式に加入し、その証として、姐さんから普段使いできる(かんざし)を贈られた。


 俺とAは、直属の上司と部下の関係とは別に、姐さんに大層気に入られ、会合や任務によく付いていっていた。
 俺が姐さんの部下になって、3ヵ月が経った夜。傘下組織を相手にした会合帰りに、普段通り、黒塗りの車に乗り込んで発進後に安全帯(シートベルト)を締め、(くつろ)ぐ中、鬱憤(うっぷん)を晴らすように、俺達に(たず)ねてきた。

「中也。A。好いた女子(おなご)男子(おのこ)()るかえ?」
『へ?』

 突然、突拍子のない事を云うから、後部座席に座っているAと、反射的にルームミラー越しに視線が合ってしまう。

「なんで、俺のほう見るんだよ?」
「中也こそ、どうしてあたしのほうを見るのかな?」

 互いに冷笑を浮かべた後、散々(あお)り合った。

「――手前(テメェ)が、俺の事好きだからじゃね?」
「は? 何言ってンの?」

 真顔で否定された衝撃(ショック)を隠すため、(さら)に言葉を発する。

「俺は居るぜ? 好きな人」
「ふーん。一応、聞いてあげようか」
「気品がある人が好きだ。Aと違ってな」
「おおッ。善かったね」

 パチパチと控えめな拍手が、後方から聞こえる。動揺する気配もなく、笑顔で俺を(たた)えていた。

「Aは、居ねェの?」
「あー…。好きなのかどうかは、正直、未だ判らないけど、気になってる人は居るな」
「へェ。善かったじゃねェか」
「ありがとう」

 破顔で済ませたが、胸中は穏やかじゃねェ。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , イケメン女子   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:竜胆 | 作成日時:2019年7月10日 1時

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