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第1話 羊の王と妃 ページ2

「ここにいたのか。白瀬。柚杏」
『ヒッ!』
「何、悲鳴あげてンだ。ほら、帰るぞ」

 僕が、その少女に逢ったのは、荒吐覇(アラハバキ)の調査中だった。
 遊戯施設(ゲェムセンタァ)硝子(ガラス)扉を開けて、活発な印象を受ける黒い短髪と、前を開け放した状態の黒のライダースジャケットを(ひるがえ)し、スキニーのデニムパンツから判る美脚で前進。問答無用で、眼前に居る少年少女の手首を掴む。

「すまない、中也。邪魔したな」
「おう」
「おい、待て! Aは善いのかよ!? ポートマフィアのコイツに協力してるんだぜ!? 中也は、『羊』を裏切るつもりだ!」
(やかま)しい。裏切る理由が無いし、一時的に協力してるだけでしょ? 一々、噂に踊らされんな」

 手(ごわ)い相手だと、直感が告げていた。
 この女の子は、自分の目で確認した事しか信じない類の人間。簡単に噂に踊らされない、現実主義者。間違いなく、感情に走りがちな羊の王と構成員を、持ち前の頭脳と冷静沈着な性格で支えている、補佐役の『羊の妃様』だと看破した。

「中也。何日かかってもいいから、帰ってきなよ」
「わかった」

 そして、先程の態度とは打って変わって、王様は、彼女の云う事を素直に聞くし、穏やかな口調になる。

「では、失礼します。お邪魔しました」
「あ。うん」

 礼儀正しく別れの挨拶(あいさつ)を言われ、深々と一礼された拍子に、サラサラの黒髪が頬にかかったが、それに気にも止めず、上半身を起こし、構成員2人の手を取って早急に退店した。

「おい。仕事に戻るんじゃねェのか?」
「君に云われずとも、そうするよ」

 中原中也に対する疑念を植え付けるのに失敗した人間が、羊の組織に1人いる。その彼女(きさき)(おう)の間には、他の構成員にある依存と不安は無く、確固とした信頼がある。退店間際に交わした目配せからも容易に推測でき、相棒のレベルだ。


 彼と彼女が再会したのは、彼が(あね)さんの部下に配属されて間もない頃。マフィアビル内にある医務室だった。
 中也同様、仲間から裏切られた際に付けられた傷が原因で、森さんの手術を受けたが、この1週間目を覚ます気配が無い。それを知る王様は、毎日時間を作っては彼女の見舞いに行き、手を握り、語りかけている。

「A…。さっさと起きて、手前(テメェ)の声聞かせろよ」

 そんな時、彼女の主治医を名乗る者が現れた。

第2話 主治医→←人物設定



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , イケメン女子   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:竜胆 | 作成日時:2019年7月10日 1時

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