第1話 羊の王と妃 ページ2
「ここにいたのか。白瀬。柚杏」
『ヒッ!』
「何、悲鳴あげてンだ。ほら、帰るぞ」
僕が、その少女に逢ったのは、
「すまない、中也。邪魔したな」
「おう」
「おい、待て! Aは善いのかよ!? ポートマフィアのコイツに協力してるんだぜ!? 中也は、『羊』を裏切るつもりだ!」
「
手
この女の子は、自分の目で確認した事しか信じない類の人間。簡単に噂に踊らされない、現実主義者。間違いなく、感情に走りがちな羊の王と構成員を、持ち前の頭脳と冷静沈着な性格で支えている、補佐役の『羊の妃様』だと看破した。
「中也。何日かかってもいいから、帰ってきなよ」
「わかった」
そして、先程の態度とは打って変わって、王様は、彼女の云う事を素直に聞くし、穏やかな口調になる。
「では、失礼します。お邪魔しました」
「あ。うん」
礼儀正しく別れの
「おい。仕事に戻るんじゃねェのか?」
「君に云われずとも、そうするよ」
中原中也に対する疑念を植え付けるのに失敗した人間が、羊の組織に1人いる。その
彼と彼女が再会したのは、彼が
中也同様、仲間から裏切られた際に付けられた傷が原因で、森さんの手術を受けたが、この1週間目を覚ます気配が無い。それを知る王様は、毎日時間を作っては彼女の見舞いに行き、手を握り、語りかけている。
「A…。さっさと起きて、
そんな時、彼女の主治医を名乗る者が現れた。
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作者名:竜胆 | 作成日時:2019年7月10日 1時