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第61話 得意分野 ページ14

「目が覚めましたか?」

 眼前の(ろう)の向こう――鉄の手枷に繋がれている左腕を失っている人間は、先日の戦でリムル様に捕らえられた者だ。なんでも敵国の王らしいが、そんな事は通用しない。

「こ、此処(ここ)何処(どこ)だ!? ヌシらは誰じゃ!? 余が誰か解っておるのか!? 余は、大国ファルムスが王。エドマリス!!」
「知っています」

 至極真面目な落ち着いた声で告げる彼女を見るのは、今までで初めてだが顔に出さないでおく。

「ここは、ジュラ・テンペスト連邦国の地下牢の一つです。私は、盟主・リムル様の第一秘書、シオン。第二秘書のAと共に、捕虜の尋問を仰せつかりました」
「以後、お見知り置きを」

 冷徹な笑みを顔に張りつけて、無精(ぶしょう)(ひげ)が伸びきってこめかみに冷や汗を浮かべる王を、牢の扉に鍵を差しこみ、解錠してその前に仁王立ちした。老いた人間の見上げた視線が、自分達と重なるがなんの情も沸き上がってこない。

「あなたには、ファルムス王国の内情について、全てを話してもらいます。殺さなければ何をしても良いと、お許しは頂いておりますので。リムル様は、私に仕返しの機会を与えて下さったのだと思います。……ですが、私個人としては、正直な話、殺された事に対する怒りは、あまり無いのです」

 思わず、『え、そうなの?』と言ってしまいそうになるが、それはエドマリスも同様の反応を示し、続く『(よみがえ)らせて頂いた』のくだりでは、理解不能と言いたげな顔をされた。あたし自身も大鬼(オーガ)から鬼人(キジン)になった時には、目を白黒させていたのを思い出す。

「ところで、ご存知ですか? リムル様は、人間がお好きです」

 だが、どうしても彼の言葉の端々に出てくる人間至上主義の考えには賛同できず、大人しく意見を告げていた彼女が、突如鬼の形相で憤怒の言葉を吐き出すものだから、相手にとっちゃ恐怖の対象でしかない。悲鳴があがったところで、シオンの後ろで一部始終観賞していたあたしは、配下の禿(はげ)頭が収容されている牢の前へ行き、優しく『口を割れ』と助言するミュウランと交代した。

「さて、今度はテメェの番だ」
「ひっ…!」
「先に言っておくが、あたしはシオンのように優しくない。だから──」

 左耳を一部残して刃で横半分に斬り、主導権がどちらにあるか理解させる。

「物言わぬ肉塊(にくかい)になる前に、全て話せ」

第62話 不器用な慰め方→←第60話 魔王宣言



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設定タグ:転生したらスライムだった件 , イケメン女子 , ベニマル   
作品ジャンル:恋愛
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竜胆(プロフ) - 葉月さん、ありがとうございます。ようやく三竦みの戦いになりましたので、楽しみにして下さい。更新頑張ります。 (2023年5月4日 17時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
葉月 - いつも楽しく読ませていただいています!これからも応援してます更新がんばってください (2023年5月3日 23時) (レス) id: 63cb68265f (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 栞を挟んで下さった方が、300人を越えました。更新頑張りますので、よろしくお願いします。 (2023年1月4日 8時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - いつの間にか百票突破! 皆さん、ありがとうございます。 (2021年9月9日 1時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 気がついたら、お気に入りにして下さる方が200人越え。ありがとうございます! (2021年3月27日 15時) (レス) id: 51177a25d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:竜胆 | 作成日時:2019年5月13日 23時

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