第43話 頑なな自分 ページ45
「A。心当たりはあるか?」
「ええ。
布団から上半身を起こし、完全に目が覚めたあたしは、真冬なのに額から汗が
「一日ゆっくり休むか?」
「大丈夫ですよ、若様。ただ夢見が悪かっただけで、仕事に影響はありません」
「リムル様がドワルゴンから帰国されてから、一度も休んでいないだろう?」
「…はい」
足元に座した若様が正座をして、思案顔で自分の目を見る。布団の淵を掴む握力が弱い事を自覚したが、後回しにしよう。敷き布団の上で正座し、頭を下げて土下座する。
「お願いします、若様。働かせて下さい」
長く感じられる沈黙の末、若様がご決断なされる。そこに怒気は無いが、はっきりとした口調で告げられた。
「シオン。今日は一緒に行動して、Aを見張れ。体調を崩したら、即刻帰宅させろ」
「はっ。承知しました」
「A。俺の命令を守れ」
「了解」
護衛二人に命令された彼は、打って変わって少年のような笑みを浮かべられて立ち上がられた。
「よし。大丈夫なら稽古に行くぞ」
「はい」
「お兄様。それはちょっと…」
若様の行動を
「あたしに弱音は要りませんし、塞ぎこむ性格でもありません。それに、若様のご命令もありますから、ここは、自分を信じて頂けないでしょうか?」
「……そんな言い方をするなんて、Aは
「申し訳ありません。姫様」
ツムギさんの二度目の人生は、家族と離れたこの異世界で命を散らしたが、今は独りじゃない。血縁者であっても、孤独ではない事に幸せを感じている。
そんな思いを自分の中だけに留めて、支度をするために立ち上がり、最後に部屋を出て行く非番のソウエイの背に言葉を投げかけた。
「助けてくれてありがとう。兄上」
「…身内を助けるのは当然だ」
褐色の肌で判りづらいが、照れ隠しからくる態度だと、あたしはちゃんと理解している。
昼時に、食堂でミュウランと顔を合わせる機会があった。
「こんにちは、ミュウラン。昨夜は余計な事を言ってしまって、本当にご免なさい」
「Aが謝る必要なんて無いわ。……どう足掻いても事実だもの。あなたは大丈夫?」
「大丈夫だよ」
事実を伝えられるのは、いつになるだろう。
485人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「転生したらスライムだった件」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時