第21話 違和感 ページ23
「若様。お待たせしました」
「大丈夫だ。そんなに待ってない」
朝稽古で見せた、豪胆でありながら、冷静に相手の急所を的確に狙う剣術とは打って変わり、遠目でも落ち着きがない私服姿の彼の所へ駆け寄る。
「……」
「? どうかされました?」
まるで発熱時の症状の如く、若干頬を赤らめ、ぼぅっと一点を見つめている。その視線の先には自分しかいないのだが、理由が全くもって判らない。
もしかしたら、姫様とシオンが見立ててくれた格好がどこか
「もしや、熱があるのですか?」
「…あ。いや。違う」
今度は、あからさまに視線を
「極度の緊張状態にあると見ても?」
「その通りです」
それまで肩に力が入っていたが、この質問で深い溜め息をつかれる。ただの家臣相手に何を緊張しているのか、さっぱり解らないが、これから数時間を肩肘張られるよりか幾分マシだ。
「Aは、どこか行きたい所はあるか?」
「ええ。以前から、屋台の牛鹿の焼き串が気になっています」
「じゃあ、そこに行こう」
「その前に、個人的にやるべき事がありますので、こちらを向いて、少し
「え? こうか…?」
行き先も定かではないのに、先を急ごうとする彼の腕を掴んで引き留め、自分がいる方向に向くよう願い出る。
「失礼。お顔に触れます」
緊張から目尻に涙を浮かべているため、伸ばした両手でお顔を包みこみ、指先でそれを優しく拭ってみせた。
「よし、もう大丈夫ですよ。さぁ、参りましょう。若様」
独り満足げに
そこで、違和感を感じる。
自分より大きく、ごつごつと骨ばった手に、なぜか自然と目に留まった。
「…A?」
「ああ、失礼。行きましょうか」
自分の行動の正体を確かめるのを後回しにし、談笑しながら行動を共にするが、屋台に
牛鹿の焼き串の味に十分満足した後、次の行き先を模索し、鍛冶工房に決定した。
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竜胆(プロフ) - 200回の投票を頂き、ありがとうございます。 (2023年3月8日 19時) (レス) id: 2d2249a2d0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - お気に入りに入れて下さる方が、再び400人に到達! ありがとうございます。更新できるように頑張ります。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 瑠亜@影月さん» 瑠亜@影月さん、コメントと応援ありがとうございます。心変わりしてしまうほどとは(笑)もう話が一杯になったので、ただいま続編に向けて考案中です。更新できるよう頑張ります! (2019年5月13日 1時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
瑠亜@影月 - 私はソウエイが推しキャラだったんですが、若様に心変わりしてしまいそうです(笑)これも竜胆さんの文才の力ですね!これからも更新頑張ってください! (2019年5月12日 21時) (レス) id: 9b9cc1c6b7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 紫癸さん» 紫癸さん、コメントと応援ありがとうございます。お褒めの言葉も重ねて感謝します。ただいまコミック版最新話の展開を待機している状態なので、もうしばらくお待ち下さい。必ず更新します。 (2019年4月11日 22時) (レス) id: ce36bc58b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2018年12月1日 1時