命に変えても《２》【憂国のモリアーティ】 (ページ10)

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二人の探偵　第二幕　6 ページ10

動かぬ証拠を見つけたはずがそれは間違っていた。
偽ではない傷の跡にレストレードは「……これはっ」とたじろぐ。
エディは

「先程作業中に手袋の上から傷つけてしまって……まだ手当ても……」

その状況にシャーロックは分が悪そうに黙ってエディを見つめる。
シャーロックの表情にエディが「信じてください！！本当です！！」と声をあげて潔白を示そうとする。
エディは尚も動かない状況に震えたように少し口角を上げ、

「……それとも、他に何か証拠でもあるんですか……？」

その言葉に場が静まる。

『……明らかな言い逃れですね』

ウィリアムにAはそっと呟く。
その言葉にふふっと笑ってウィリアムは「そうだね」と囁いた。

「じゃあ少し僕もこの会議に参加しようかな」

『……？』

ウィリアムの唐突の発言にAは首をかしげたが、そのことを気にすることなくウィリアムは一歩前に脚を踏み出した。

「おかしいですね……」

唐突なウィリアムの会議への参加にエディが明らかの動揺を見せた。
シャーロックが「リアム……」と小さく呟く。
しかしそのことを気に止めることなくウィリアムは淡々と話を進めた。

「手袋の上から怪我をした……そうですね？」

「は……はい」

単なる事実確認にエディは返事を返す。

「ならどうして、眼鏡のつるにまで血が飛んでいるんです？」

まっすぐな鋭い緋色の眼差し。
誰も思いもしなかったその言葉にエディが明らかなうろたえを見せ、苦しそうに「え……あ、はっ！！」と目を丸くして言う。
その物言いにシャーロックとジョンが面食らったような表情を見せる中、ただ淡々と、ウィリアムは推理を続ける。

「手のひらの怪我……まして手袋までしていてそこに血痕が残るはずがない」

尚も続く推理の言葉にエディは「あ……う……」と言葉にならない声を漏らすばかり。
ついにはそのウィリアムの動かぬ証拠の言葉に観念したように小さく「殺すつもりはなかったんだ……」と口を開いた。
ついに口を割った犯人にレストレードは手錠をかけ、事件は集結した。
その光景にウィリアムは微笑み、ポケットにしまっていた懐中時計を見る。

「良かった……あと三分でグランサムに到着です。間に合いましたね、ホームズさん」

なんの表情も変えることなくそう告げるウィリアムにシャーロックは少し笑うようにして、

「……てめぇリアム、俺よりはったりが上手いじゃねーの！！」

と称賛の声を上げた。